一 憲法第三二条は、被害者訴追主義または一般訴追主義を保障した規定ではない。 二 検察官のした不起訴処分に対する民事訴訟ないし行政訴訟の提起は、わが国法上許されない。
一 憲法第三二条と被害者訴追主義 二 検察官のした不起訴処分に対する民事訴訟ないし行政訴訟の適否
憲法32条,刑訴法247条,行政事件訴訟特例法1条
判旨
憲法32条は被告人として裁判を受ける権利を保障するもので、私人に訴追権を認めるものではない。検察官の不起訴処分に対し民事・行政訴訟で争うことは許されず、裁判権のない事項を目的とするものとして却下される。
問題の所在(論点)
検察官による不起訴処分について、私人が民事訴訟や行政訴訟を提起して争うことが認められるか。また、かかる制限が憲法32条の裁判を受ける権利に抵触しないか。
規範
1. 憲法32条が保障する「裁判を受ける権利」とは、被告人として裁判所の審判を受ける権利を指し、私人に訴追の権利(被害者訴追主義等)を保障するものではない。2. 刑事訴追の在り方(国家訴追主義か私人訴追主義か)は立法政策の問題であり、現行法(刑訴法247条等)は原則として国家訴追主義を採用している。3. 検察官の不起訴処分に対する不服申立ては、上級庁への監督権発動の促しや検察審査会への申立てに限られ、民事・行政訴訟によることは許されない。
重要事実
上告人(被害者側)が、検察官のなした不起訴処分を不服として、民事または行政訴訟の手続きによりその是正を求めて提訴した事案。原審は、本件請求が裁判所の裁判権に属さない事項を目的とするものであるとして却下したため、上告人が憲法32条違反等を理由に上告した。
あてはめ
1. 憲法32条の趣旨は被告人の権利保障にある。本件において上告人が主張するような被害者による訴追権は憲法上保障された権利とはいえない。2. 刑事訴訟法は、検察官に公訴権を独占させる国家訴奏主義を採用しており(同法247条)、例外的に付記決定手続(262条以下)を認めるに留まる。3. 上告人の訴えは、法律上の根拠のない私人訴追を認めるよう求めるもの、または検察官の職権行使を民事・行政訴訟で争おうとするものであり、わが国の法制度上、裁判所の裁判権が及ばない事項であるといえる。
結論
検察官の不起訴処分を民事・行政訴訟で争うことはできず、これら訴えを却下した原判決は正当である。
実務上の射程
憲法32条の意義(被告人の権利保障)と国家訴追主義の関係を論じる際の基礎判例。検察官の不起訴処分を直接行政訴訟(取消訴訟等)で争うことができない(処分性以前に裁判権の欠如・排他的救済手段の限定)という論理で活用される。
事件番号: 昭和25(オ)238 / 裁判年月日: 昭和27年10月31日 / 結論: 棄却
昭和二三年政令第二〇一号によつて憲法上保障されている団体交渉権、団体行動権等の権利が阻害されたと主張し、右政令の取消を求める訴は、具体的権利の紛争に関する訴とはいえない。