行政事件訴訟特例法施行前においても、農地買収計画に関する訴願を棄却された場合においては、右買収計画の取消または変更を求める訴の出訴期間は、買収計画を知つた日から起算すべきではなく、訴願裁決を知つた日から起算すべきである。
行政事件訴訟特例法施行以前において農地買収計画に対する訴願を棄却された場合における右買収計画の取消または変更を求める訴の出訴期間の起算日。
行政事件訴訟特例法5条4項,自作農創設特別措置法7条,自作農創設特別措置法47条の2
判旨
行政事件訴訟特例法施行以前において、農地買収計画に対し異議・訴願を経た場合、当該計画に対する出訴期間は、訴願裁決を知った日から起算される。
問題の所在(論点)
行政事件訴訟特例法施行前の事案において、行政処分(農地買収計画)につき訴願等を経た場合、当該処分に対する出訴期間はいつから起算されるべきか。原処分を知った日か、それとも訴願裁決を知った日か。
規範
行政処分について異議や訴願の手続きが踏まれた場合、その裁決は行政庁による争訟裁判の形式を有し、判断の対象は原処分の当否そのものである。したがって、裁決に対する出訴期間内は原処分がなお争われ得る状態にあるといえ、原処分に対する出訴期間の起算点は、裁決があったことを知った日と解するのが相当である。
重要事実
上告人は、行政事件訴訟特例法の施行前に農地買収計画に対して自作農創設特別措置法に基づく異議・訴願を申し立てたが、棄却された。その後、上告人は買収計画の取消しを求めて出訴したが、被告側は、出訴期間は「買収計画を知った日」から計算すべきであり、本訴は期間経過により不適法であると主張して争った。
あてはめ
訴願裁決は、一面で行政処分としての性質を持つが、他面では行政庁が行う争訟裁判の一形式であり、その実質は原買収計画の当否の判断である。棄却裁決の取消しを求める訴えは、実質的に買収計画の取消しを求める訴えと差異がない。そうであれば、裁決に対する出訴期間内は、原買収計画もなお関係者によって争われ得る法的な状態に置かれているといえる。したがって、本件においても訴願裁決を知った日から出訴期間を計算すべきである。
結論
本件訴訟の出訴期間は訴願裁決を知った日から起算されるため、本訴を適法とした原判決に違法はなく、上告は棄却される。
実務上の射程
行政事件訴訟法制定前の判例であるが、原処分主義(行訴法10条)下においても、裁決を経た場合の出訴期間の特例(行訴法14条3項)の趣旨を理解する上で重要な論理を示す。処分と裁決が実質的に不可分である場合の法的安定性と権利救済の調和の観点から参照される。
事件番号: 昭和26(オ)392 / 裁判年月日: 昭和27年11月20日 / 結論: 破棄差戻
自作農創設特別措置法第四七条の二にいう「当事者がその処分のあつたことを知つた日」とは、当事者が書類の交付、口頭の告知その他の方法により処分を現実に知つた日を指すのであつて、抽象的な知り得べかりし日を意味するものではない。
事件番号: 昭和25(オ)18 / 裁判年月日: 昭和27年4月25日 / 結論: 棄却
訴願裁決書の謄本が郵便により配達された以上、特段の事情のないかぎり、右謄本の配達を受けた日に右裁決のあつたことを知つたものと認めるべく、行政処分および訴願裁決の取消または変更を求める訴の出訴期間は、その日から起算すべきである。
事件番号: 昭和25(オ)341 / 裁判年月日: 昭和27年4月18日 / 結論: 破棄差戻
行政事件訴訟特例法施行の日に農地買収計画に対する異議申立期間が満了し、当時の交通事情等により訴訟関係人らが同法の内容を知り得なかつた事情があるならば、同法施行後にかいても、右買収計画の取消を求める訴を提起するについて異議、訴願を経ない正当な事由があるものというべきである。
事件番号: 昭和25(オ)287 / 裁判年月日: 昭和26年10月30日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】行政処分に対する取消訴訟において、出訴期間の規定は公法上の法律関係を早期に確定させるための強行規定であり、処分の実体的な違法性の有無や行政庁による訴訟提起の要請にかかわらず適用される。 第1 事案の概要:上告人は、自作農創設特別措置法に基づく農地買収処分について、病者が不在地主にならない保障に反す…