一 民訴第一八七条第三項後段の規定は、同一審級において裁判官の過半数が変更するに至つた場合に証人の再尋問の申出があつたときの手続を定めたものであつて、第一審裁判所が尋問した証人につき控訴審において再尋問の申出があつた場合に適用すべきでない。 二 当事者の申し出た証拠が唯一の証拠方法でないときは、申出の許否を決定することなく結審しても違法でない。
一 民訴第一八七条第三項後段の趣旨 二 証拠決定をしないで結審しても違法でない場合
民訴法187条3項,民訴法259条
判旨
控訴審は第一審の続審であり、第一審判決を再検討するに必要な限度で行われるものであるから、第一審から控訴審への移行は裁判官の更迭には当たらない。したがって、控訴審において第一審で尋問済みの証人につき再尋問の申出があったとしても、旧民訴法187条3項(現行249条2項・3項参照)による証人再尋問の義務は生じない。
問題の所在(論点)
第一審から控訴審への移行が「裁判官の更迭」に該当し、第一審で尋問された証人について控訴審で再尋問の申出があった場合、裁判所に再尋問を行う義務(旧民訴法187条3項、現行249条3項参照)が生じるか。
規範
控訴審は、第一審判決を再検討するに必要な限度における続審の性質を有するものであり、全部にわたって新たな手続を要する覆審ではない。裁判官の更迭による弁論の更新(旧民訴法187条2項、現行249条2項)とは別に、控訴審独自の規定(旧民訴法377条2項、現行298条等)が存在することに鑑みれば、控訴による繋属は裁判官の更迭には該当しない。したがって、合議体の過半数が変更した場合に証人の再尋問を要する旨の規定は、同一審級内での変更にのみ適用され、第一審の証人を控訴審で再尋問する場合には適用されない。
重要事実
上告人は、第一審で尋問が行われた証人Dについて、控訴審において再尋問の申出を行った。しかし、控訴裁判所は、証人Dの再尋問を行うことなく結審し、第一審における証人Dの証言を事実認定の基礎として判決を下した。これに対し上告人は、控訴審において裁判官の構成が新しくなった以上、裁判官の過半数が更迭された場合に該当し、再尋問を行わなかったことは違法であると主張して上告した。
あてはめ
控訴審は第一審の続審であり、控訴裁判所において裁判官の構成が新しくなるのは控訴の性質上当然であって、これを「裁判官の更迭」とは呼ばない。法が控訴審における口頭弁論の結果の陳述を別途規定していることは、控訴による審級の移行を更迭と区別している趣旨である。本件において、原審が第一審の証人Dの再尋問を行わずに第一審の証言を援用したことは、同一審級内の更迭ではない以上、手続上の違法は認められない。また、その他の証拠方法についても、唯一の証拠に当たらない限り、裁判所は必要がないと認めれば暗黙に排斥することが可能である。
結論
控訴審は裁判官の更迭には当たらないため、第一審の証人を再尋問しなかった原審の判断に違法はなく、上告は棄却される。
実務上の射程
裁判官の更新(249条)の適用範囲を同一審級内に限定し、続審制の下での審級間の移動には適用されないことを示した。実務上、一審の証拠は二審に当然に引き継がれるため、二審で再尋問を求めるには更迭規定ではなく、証拠調べの必要性(181条1項)の観点から主張すべきである。
事件番号: 昭和36(オ)303 / 裁判年月日: 昭和38年9月3日 / 結論: 棄却
必ずしも尋問しなければならないものではない(昭和二七年一二月二五日第一小法廷判決、民集六巻一二号一二四〇頁参照)。
事件番号: 昭和32(オ)415 / 裁判年月日: 昭和34年6月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】裁判官の更迭に伴い弁論の更新がなされた場合において、当事者が従前の証人につき再尋問の申出をしない限り、更新前の証拠調べの結果を判決の基礎とすることは適法である。 第1 事案の概要:上告人は、建物の譲渡を受けたとして所有権を主張したが、原審(控訴審)はこれを認めず請求を棄却した。原審の審理過程におい…