一 「イ」又は「フ」とのみ記載した投票は、候補者中他にイのつく者又はフのつく者がなくても、岩永藤樹を選ぶ趣旨が表明されていると認めることはできない。 二 「井輪長富士木」と記載した投票は、岩永藤樹に対する有効投票と認めるべきである。 三 「ノフガ」又は「イマガ」と読まれる投票、「ケタナフチ」又は「クタナフチ」と読まれる投票及び「イウゴ」又は「イワゴ」と読まれる投票は、岩永候補者の有効投票と認めることはできない。 四 候補者氏名欄に「イワナガ」とあり、その左欄外に「ウロシテ」とある投票は、他事を記載したものとして無効である。 五 「イワオ」と記載してある投票は、岩永候補者の有効投票と認められない。 六 「藤永秀樹」と記載した投票は岩永藤樹を誤記したものと認め、有効とすべきである。 七 「岩永繁」、「岩永岩人」、「岩永森一」、「岩永吉次」、「中島藤樹」と記載してある投票は、岩永藤樹を誤記したものとは認められない。「山永」と記載してある投票は、その筆勢、字形等から見て、第一字の「山」が「岩」の誤記と認められない場合は無効である。 八 「克水」と記載してある投票は、「岩永」と認めることはできない。
一 仮名で候補者の氏名又は名の頭文字一字を記載した投票の効力 二 あて字を以て記載した投票の効力 三 候補者の何人を記載したかを確認し難い投票の例 四 他事を記載した投票の例 五 候補者にあらざる者の氏名を記載した投票の例 六 候補者の氏名を誤記したものと認めるべき投票の例 七 候補者の氏名を誤記したものと認められない投票の例
道府県制229条ノ9,道府県制22条ノ9
判旨
投票用紙に記載すべき氏名は必ずしも戸籍上の氏名であることを要しないが、特定の候補者を選ぶ趣旨が客観的に確認できる必要がある。当て字や一部の誤記があっても候補者を特定できれば有効であるが、判別不能な文字や他事記載がある場合は無効となる。
問題の所在(論点)
公職選挙法(当時の規定)下における投票の有効性に関し、記載された氏名が戸籍通りでない場合や、当て字、誤記、他事記載が含まれる場合に、どの程度の記載があれば特定の候補者を選ぶ趣旨が確認できるか。
規範
投票用紙に記載された氏名が、戸籍上の氏名と厳密に一致していなくとも、その記載によって特定の候補者の誰かを選ぶ趣旨が確認できるものであれば、その投票を有効とすべきである。具体的には、万葉仮名のような当て字や、氏名の一部に誤記があっても、候補者本人を指すことが明らかであれば有効となる。一方で、単なる一文字の記載のみで特定が困難な場合、他人の氏名と解される場合、又は他事記載がある場合には、候補者を選ぶ趣旨が表明されているとは認められず無効となる。
事件番号: 昭和53(行ツ)50 / 裁判年月日: 昭和53年6月23日 / 結論: 棄却
「小四」と記載された投票は、候補者Cに対する有効投票とは認められない。
重要事実
村議会議員選挙において、候補者「岩永藤樹」に対する投票の有効性が争われた。問題となった投票には、(1)「イ」や「フ」など頭文字一文字のみの記載、(2)「井輪長富士木」という万葉仮名風の当て字、(3)「藤永秀樹」という一部誤記、(4)「岩永繁」等、他の実在または非候補者名と解される記載、(5)氏名欄外に「ウロシテ」等の他事記載があるものが含まれていた。
あてはめ
(1)「イ」「フ」のみの記載は、他に同音の候補者がいなくても、岩永藤樹を選ぶ趣旨が表明されているとは到底認められない。(2)「井輪長富士木」は「イワナガフジキ」と明らかに読めるため、奇を衒った記載であっても有効である。(3)「藤永秀樹」は四字中三字が符号しており、誤記と認められるため有効である。(4)「岩永繁」「岩永吉次」などは誤記の範囲を超え、候補者でない者を記したものとして無効である。(5)欄外に「ウロシテ」とあるものは他事記載に該当し無効である。(6)判別不能な文字(「イ」の下が文字の体をなさない等)や「イワオ」等の別人は、候補者を特定できないため無効である。
結論
特定の候補者を選択する意思が客観的な記載から読み取れる「井輪長富士木」や軽微な誤記である「藤永秀樹」は有効であるが、特定不能な一文字、他事記載、別人名と判断されるものはすべて無効である。
実務上の射程
自書式投票における「候補者の特定可能性」の判断基準を示す。答案上は、誤記や当て字がある場合でも、その音や字形の類似性から「候補者を選ぶ趣旨」が確認できるかを具体的に論じる際の指標となる。他事記載(公職選挙法上の無効事由)の判断基準としても活用できる。
事件番号: 昭和23(オ)131 / 裁判年月日: 昭和24年7月13日 / 結論: 破棄自判
【結論(判旨の要点)】選挙管理委員会が作成・配布した候補者一覧表から特定の候補者を遺脱したことは、明文規定の違反がなくとも選挙の公正を著しく欠く「選挙の規定」違反にあたる。また、その後の補填措置では不十分であり、選挙の結果に異動を及ぼす虞があるとして選挙は無効とされる。 第1 事案の概要:昭和22年の宮崎県議会議員選挙…
事件番号: 昭和31(オ)734 / 裁判年月日: 昭和31年10月18日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】公職選挙法上の自書式投票において、候補者の氏名の一部に誤記がある場合であっても、全候補者の氏名との照合により特定の候補者に対する投票の意思が客観的に認められるときは、当該投票は有効である。 第1 事案の概要:本件選挙において、ある投票用紙に記載された氏名の「氏」は「D」であり、「名」の二字のうち一…