一 証拠申請につき許否を決定しないで口頭弁論を終結した場合、当事者が異議を述べないときは、その証拠方法を放棄したものと認むべきである。 二 代物弁済の予約につき、後記事由(第二審判決理由参照)があるときは、公序良俗に反し無効である。
一 証拠方法を放棄したものと認むべき一事例 二 代物弁済の予約が公序良俗に反すると認められる一事例
民訴法258条,民法482条,民法90条
判旨
金銭借入に際してなされた代物弁済の予約が、債務者の窮迫・無知等に乗じて著しく不当な利益を得る目的でなされた場合には、民法90条の公序良俗に反し無効となる。
問題の所在(論点)
金銭消費貸借契約に際してなされた代物弁済の予約について、目的物の価額と貸付金額の差や、契約締結に至る経緯に不当性がある場合、民法90条に基づき無効とされるか。また、明示的な「無効」の主張がない場合でも弁論の全趣旨からその主張を認めることができるか。
規範
金銭借入に伴う代物弁済の予約が、(1)債務者の窮迫、軽卒、もしくは無経験等を利用し、(2)債権者が著しく不当な利益を得ることを目的としてなされたと認められる場合には、社会通念上許容される限度を超えた暴利行為として、公序良俗(民法90条)に反し無効となる。
重要事実
債権者(上告人)は、債務者(被上告人)に対し、戦時下の空襲による不動産価値の低下等を理由に、極めて短期間の消費貸借契約を締結した。その際、貸付金5,000円に対し、その担保として本件宅地建物について代物弁済の予約を付した。被上告人は「無智な弱い者を陥穽に誘致した」と主張し、代物弁済予約の有効性を争った。原審は、当時の諸事情を総合し、本件予約を公序良俗違反として無効と判断した。
あてはめ
被上告人が「無智な弱い自分を陥れた」と述べ、それに対し上告人が「窮迫、軽卒、無経験を利用した不当利益目的ではない」と反論していることから、弁論の全趣旨に基づき公序良俗違反の主張があったと解される。その上で、原審が認めた、債務者の属性や借入の短期間性、担保物件の価値と貸付金額との乖離等の諸事実を総合すれば、本件予約を暴利行為として公序良俗違反と断定することが可能である。
結論
本件代物弁済の予約は公序良俗に反し無効である。よって、原審の判断に違法はなく、上告を棄却する。
実務上の射程
代物弁済予約や譲渡担保における暴利行為規制のリーディングケース。答案上では、過剰な担保取得が公序良俗違反となるかの判断において、「債務者の窮迫等」の主観的態様と「著しい不均衡」という客観的事態を総合考慮する規範として活用する。また、当事者の法的主張が不明瞭でも弁論の全趣旨から認定できるとする民訴法上の準則としても参照しうる。
事件番号: 昭和34(オ)726 / 裁判年月日: 昭和37年9月14日 / 結論: 破棄差戻
丙を代理人として、甲の先代から不動産を買い受けた乙が、丙にその所有権を移転する意思がないにも拘らず、たまたま右の売買契約書に買主名義が丙となつていた関係上、丙をして甲に対する所有権移転登記手続請求の訴を提起させ、その勝訴の確定判決に基づいて甲より丙に所有権移転登記を受けさせた場合には、民法第九四条第二項の法意に照し、乙…
事件番号: 昭和38(オ)1111 / 裁判年月日: 昭和39年5月23日 / 結論: 棄却
債務額一三七万円の約四・五倍にあたる六〇九万五千円余の価額を有する土地および建物を目的とする代物弁済契約であつても、相手方の窮迫、軽卒に乗じ不当な利益を獲得する目的でしたものと認められない以上、右代物弁済契約は、民法第九〇条により無効であるとはいえない。
事件番号: 昭和33(オ)734 / 裁判年月日: 昭和35年6月2日 / 結論: 破棄差戻
金融業者が、金二〇万円を、弁済期一ケ月後、利息一ケ月九分の約で貸し付けるにあたり、借主が右債務の支払を怠つたときは、貸主はその支払にかえて時価八〇万円を下らない不動産の所有権を取得することができる旨代物返済の予約をした場合であつても、貸主が、巨利を博すべくはじめから右不動産を処分する意図をもつて、借主側の窮迫、無経験な…