期間の定ある建物の賃貸借が、更新拒絶の通知が効力なく、借家法第二条によつて前と同一条件をもつて更新された場合でも、賃貸人は、その後正当の事由あるかぎり、解約の申入をすることができる。
建物賃貸借の法定更新と解約の申入
民法619条,借家法2条
判旨
借家法に基づく法定更新がなされた場合であっても、前賃貸借の期間の定めは引き継がれず、更新後の賃貸借は期間の定めのないものとなるため、民法619条1項但書の適用により、賃貸人は正当事由がある限りいつでも解約の申入れをすることができる。
問題の所在(論点)
借家法2条1項(現行借地借家法26条1項)に基づき法定更新された賃貸借において、前契約の「期間の定め」は維持されるか。また、更新後に賃貸人が解約申入れを行うことができるか。
規範
借家法(旧法)2条1項の「前賃貸借ト同一ノ条件」には、期間の定めは含まれない。借家法に別段の規定がない限り民法の一般規定が適用されるため、法定更新後の賃貸借は「期間の定めのないもの」となり、民法619条1項但書(現行法617条1項・借地借家法28条参照)に基づき、正当事由(旧借家法1条ノ2)を備える限り、賃貸人はいつでも解約の申入れをすることが可能である。
重要事実
賃貸人(上告人)は、昭和11年に家屋を期間の定め(昭和21年12月まで)を設けて賃借人(被上告人)に貸し付けた。期間満了前に更新拒絶の通知をしたが、正当事由が欠けていたため法定更新された。その後、賃貸人は訴訟継続中の昭和22年に、改めて自己使用の必要性を理由として解約の申入れを行った。原審は、法定更新によって期間の定めも同一条件で更新されたと判断し、解約申入れの可否について判断を遺脱した。
あてはめ
借家法は民法の特別法であるが、更新拒絶等の特段の規定を除き、民法の一般規定の適用を排除するものではない。法定更新により「同一の条件」で契約が存続したとしても、期間については民法619条の趣旨に照らし、期間の定めのないものに移行したと解するのが相当である。本件において、上告人がした更新拒絶に正当事由がなく法定更新されたとしても、上告人はその後、自己使用の必要性という正当事由を具備して解約の申入れをしている以上、その有効性を判断すべきであった。
結論
法定更新後の建物賃貸借は期間の定めのないものとなる。賃貸人は、正当事由がある限り、いつでも解約の申入れをすることができ、申入れから所定の期間(6ヶ月)経過により賃貸借は終了する。
実務上の射程
法定更新の法的性質が「期間の定めのない契約への移行」であることを明確にした基本判例。借地借家法26条1項後段においても「期間の定めがないもの」と明文化されており、実務上、法定更新後の終了については更新拒絶ではなく「解約申入れ」の要件(同法27条、28条)を検討する際の前提知識として用いる。
事件番号: 昭和28(オ)54 / 裁判年月日: 昭和28年7月23日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】建物の賃貸借において、解約申入れ時に正当事由が存在し、一旦有効に解約の効力が発生した後は、その後に正当事由が消滅したとしても、解約の効力は失われない。 第1 事案の概要:上告人(賃借人)と被上告人(賃受人)との間の家屋賃貸借契約において、賃主から解約の申入れがなされた。解約申入れの時点では正当事由…
事件番号: 昭和27(オ)494 / 裁判年月日: 昭和29年3月23日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】賃貸借契約の解約申入れがなされた場合、特段の事情がない限り、申入れの日から民法所定の期間を経過した時点で契約は終了する。本判決は、昭和22年2月25日の解約申入れに対し、6ヶ月経過後の同年8月25日をもって賃貸借が終了したとした原審の判断を妥当とした。 第1 事案の概要:本件では、賃貸人から賃借人…