一 「期間満了したら必ず家屋を明け渡してくれ」との表示は、借家法第二条の更新拒絶の意思の表示と解される。 二 (判決参照)
一 更新拒絶の意志の表示方法 二 借家法第一条の二の「正当ノ事由アル場合」の一事例
借家法2条,借家法1条ノ2
判旨
賃貸借契約の更新拒絶に必要な「正当の事由」は、賃貸人が生活維持のために家屋を商売に使用する必要性と、賃借人が自ら居住せず無断転貸している等の利用状況を比較衡量して判断すべきである。また、期間満了後66日経過後の訴え提起であっても、継続使用の拒絶が明らかであれば「遅滞なく」異議を述べたものと認められる。
問題の所在(論点)
1. 賃貸人の商売上の必要性と賃借人の無断転貸状況が「正当の事由」を基礎付けるか。 2. 期間満了から66日経過後の訴訟提起が「遅滞なく」なされた異議といえるか。
規範
1. 賃貸借の更新拒絶における「正当の事由」(借家法2条1項、現行借地借家法28条)は、賃貸人側の自己使用の必要性と、賃借人側の使用の必要性、および借家の利用状況を総合的に比較衡量して判断する。 2. 期間満了後の建物使用継続に対する異議(借家法2条2項、現行借地借家法26条2項)が「遅滞なく」なされたか否かは、従前の明渡し要求の有無や訴訟準備の必要性等の具体的事状に照らして判断される。
重要事実
賃貸人(被上告人)は農地改革により収入を失い、生活維持のため本件家屋で商売を始める経済上の必要があった。一方、賃借人(上告人A1)は隣接する自己所有家屋に居住しており本件家屋を自ら使用しておらず、賃貸人の承諾なく弟(上告人A2)に転貸(または使用貸借)していた。賃貸人は期間満了に際し「必ず明渡してくれ」と告げ、期間満了から66日後に本訴を提起した。
あてはめ
1. 賃貸人は生活困窮から本件家屋を商売に供する必要性が高い。対して、賃借人は自ら居住せず無断転借人に居住させているに過ぎず、自己使用の必要性がない。転借人(A2)の退去による不利益も、賃借人の所有家屋への同居が可能であることから受忍限度内といえるため、正当事由が認められる。 2. 賃貸人は以前から累次明渡しを求めており、継続使用を許容する意思がないことは明白であった。訴訟提起には相当の準備を要することに鑑みれば、66日の経過は「遅滞なく」の要件に反しない。
結論
本件更新拒絶には正当事由が認められ、かつ遅滞なく異議が述べられたため、賃貸借契約は終了する。よって、賃借人および無断転借人に対する明渡し請求は認められる。
実務上の射程
正当事由の判断において、賃貸人側の「居住」以外の経済的必要性(商売等)や、賃借人側の「非居住・無断転貸」という消極的要素が重視されることを示す。また、法定更新を阻止するための「遅滞なき異議」について、物理的な日数(約2ヶ月)のみならず、前後の拒絶の意思表示の継続性や訴訟準備期間を考慮する柔軟な判断枠組みとして活用できる。
事件番号: 昭和24(オ)96 / 裁判年月日: 昭和25年7月20日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】賃貸人の自己使用の必要性は、単に個人的・主観的な見地からではなく、社会的・客観的立場から考察すべきであり、当事者双方の利害を比較して正当性の有無を判断すべきである。 第1 事案の概要:上告人(賃貸人)は、本件建物を自ら使用することを目的として、被上告人(賃借人)に対し解約の申入れおよび明渡しを求め…