病院の建物を執行吏の保管に移し、債務者の申立があるときは、債務者が右建物において医業を経営するに必要な限度で、これにその使用を許すべき旨を執行吏に命ずる仮処分は、建物の医業経営に必要な限度の判断を執行吏に委ねているからといつて、違法ではない。
建物の医業経営に必要な限度の判断を執行吏に委ねる仮処分の効力。
民訴法758条
判旨
当事者間に争いのない事実関係については、特段の事情がない限り裁判所が釈明権を行使してまでその真否を質す必要はなく、また執行吏に対して建物使用の範囲に関する判断を委ねることも不当ではない。
問題の所在(論点)
当事者間に争いのない事実がある場合に裁判所は釈明義務を負うか。また、建物の使用許可範囲の判断を執行吏に委ねることは適法か。
規範
裁判所は、弁論の全趣旨に照らして当事者間に争いのない事実関係が形成されている場合には、その事実を基礎として裁判を行うことができ、特段の事情がない限り、それ以上に釈明権を行使して当事者の真意を探る義務を負わない。また、執行に関連する付随的な判断(使用許可の範囲等)を執行吏に委ねることは、それが社会通念上の常識により判断可能な限定的範囲であれば許容される。
重要事実
上告人は、被上告人らが管理占有する病院建物の全部について仮処分を申請し、一審・二審を通じて被上告人側も占有関係を争わなかった。しかし、仮処分決定後に、上告人は「実は自分も一部占有していた」と主張し、裁判所が一部占有の事実を釈明しなかったことは違法であると主張した。また、原判決が「医業経営に必要な限度で被上告人の使用を許すべき」との判断を執行吏に委ねた点についても、高度な判断を要するため執行裁判所の裁判官が行うべきだと不服を申し立てた。
あてはめ
事実関係について、上告人は当初から被上告人らが建物全部を管理占有していると主張し、被上告人側もこれを争わなかった。この事実は弁論の全趣旨から明白であり、仮処分執行後に上告人が一部使用していた事実は執行吏の許可に基づくものであって、従前の占有関係を覆すものではない。したがって、裁判所が重ねて釈明を行う必要はない。また、医業経営に必要な限度の使用許可という判断は、建物の使用範囲に限定されたものであり、普通の常識を有する執行吏に委ねることが不当といえるほど複雑な事項ではない。
結論
釈明権行使の怠りや判断委任の違法はなく、上告を棄却する。
実務上の射程
自白に類する当事者間の合意がある場合の釈明義務の限界を示す。また、民事保全の執行において、執行吏に一定の裁量的判断を認める実務の合理性を肯定する。答案上は、弁論主義の適用範囲と釈明権の限界、執行官の職務権限の文脈で使用できる。
事件番号: 昭和24(オ)217 / 裁判年月日: 昭和26年5月18日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】占有妨害排除の請求権を保全するための仮処分においては、債権者が占有権を有することを疏明すれば足り、その基本となる権利(本権)についての疏明までは不要である。また、工場建物と共に機械器具等を一括して転貸借した際、それらが建物の従たるものと認められる場合には、当該契約には借家法が適用される。 第1 事…