書証を提出者の不利益に判断し、かえつて相手方の利益に判断しても違法ではない。
証拠の共通
民訴法185条
判旨
準備書面が記録に編綴されていても、その後の口頭弁論で陳述されない限り、その記載事実を陳述したものとは認められない。また、裁判長の釈明に対する当事者の陳述は、その文理に従い客観的に解釈されるべきである。
問題の所在(論点)
1. 記録に編綴された準備書面の記載事実について、口頭弁論での陳述がない場合に、主張として認めることができるか。 2. 裁判長の釈明に対する当事者の陳述を、当事者の意図に基づき文理に反して解釈することが許されるか。 3. 弁論再開の可否に関する裁判所の裁量の範囲。
規範
1. 準備書面の陳述:準備書面が記録に編綴されている事実のみをもって、直ちにその記載事実を陳述したものとはいえず、口頭弁論において当該準備書面に基づき主張事実を陳述する手続を要する。 2. 釈明に対する陳述の解釈:裁判長の釈明に対してなされた当事者の陳述の内容は、その文理を離れて一方的な主観的意図により解釈することはできず、客観的な表示内容に基づいて判断される。
重要事実
上告人(原告)は不動産に関する訴訟を提起した。上告人は、記録に編綴された準備書面の内容や、裁判長の釈明に対する陳述から、本訴請求が「所有権に基づくものである」と主張したが、口頭弁論調書には、釈明に対し「不動産の保管に関する契約履行を求めるものである」と記載されていた。原審は、上告人の請求原因を保管契約に基づくものと判断し、所有権に基づく主張とは扱わなかった。また、上告人が申請した弁論再開も認められなかった。
事件番号: 昭和28(オ)533 / 裁判年月日: 昭和31年1月27日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】当事者が明示的に事実を主張していない場合であっても、証拠の申出や弁論の全趣旨から、その事実を主張する意思が認められるのであれば、裁判所は当該事実を認定して判決の基礎とすることができる。 第1 事案の概要:上告人が被上告人に対し請求を行った事案において、被上告人は解除権の留保およびこれに基づく契約解…
あてはめ
1. 本件では、準備書面が記録に編綴されているものの、その後の口頭弁論でこれに基づき陳述した形跡がないため、主張として成立していない。 2. 釈明に対する回答において、上告人は明確に「保管に関する契約履行を求める」と述べており、これを「所有権に基づく」趣旨と解釈することは文理上不可能である。したがって、原審が所有権に基づく主張を摘示しなかったことに判断遺脱はない。 3. 弁論を再開するか否かは事実審の専権(自由裁量)に属し、本件で再開の必要がないとした不許可判断に違法はない。
結論
口頭弁論で陳述されない準備書面は主張として考慮されず、釈明への回答は文理通りに解釈される。原審の判断に違法はなく、上告は棄却される。
実務上の射程
当事者の主張の特定に関する実務上の指針となる。書面提出だけでなく口頭弁論での陳述が不可欠であるという弁論主義の基本原則を確認するものである。また、釈明に対する回答が訴訟物の特定に決定的な影響を与えることを示しており、答案作成上は、当事者の主張整理において調書等の客観的記載を重視すべき根拠として活用できる。
事件番号: 昭和33(オ)707 / 裁判年月日: 昭和36年1月20日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】準備書面に記載された事項が口頭弁論で陳述されていない場合であっても、それが法律上の意見にすぎないときは、裁判所がこれと同様の判断を示したとしても違法ではない。 第1 事案の概要:上告人は、原審において準備書面に記載した特定の事項が口頭弁論で陳述されていないにもかかわらず、原審がその記載内容と同旨の…
事件番号: 昭和33(オ)26 / 裁判年月日: 昭和34年7月2日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】売買の予約の成立を認めるためには、その前提となる事実について証拠に基づき合理的に認定する必要があり、供述内容が予約ではなく本契約の成立を指している場合には、予約の成立を認めることはできない。 第1 事案の概要:被上告人(原告)が上告人(被告)から土地200坪を単価140円で購入したと主張し、売買一…
事件番号: 昭和27(オ)1013 / 裁判年月日: 昭和29年11月26日 / 結論: 棄却
定款に記載された現物出資およびその履行が真実有効になされたかどうかは、人証その他一般の証拠から判定し得るのであつて、必ずしも会社設立のため作成された書類のみによつて決定しなければならぬものではない。