土地家屋の譲受人が、現住所を引き揚げて帰郷し、右家屋に居住し、相続人として病臥中の実父を扶養し、且祖先の祭祝を行うという、右譲渡契約に附された停止条件は、譲受人の個人的自由を拘束するものではないから、不法ではない。
土地家屋の譲渡契約に附された譲受人の帰郷居住等を内容とする停止条件の適法性
民法90条,民法132条
判旨
不動産譲渡の条件として「帰郷」を求めることは、個人の自由を不当に拘束するものとはいえず、公序良俗に反しない。また、当該条件が憲法施行前に不成就として確定した場合には、憲法違反の問題は生じない。
問題の所在(論点)
不動産の譲渡に「帰郷」という停止条件を付すことが、個人の自由を不当に拘束する不法な条件として無効になるか。また、憲法施行前に不成就となった条件について憲法違反を主張できるか。
規範
不動産の譲渡契約において、特定の行為を条件とする付款が付された場合、それが直ちに相手方の個人的自由を不当に拘束し不法なもの(公序良俗違反等)になるとは限らない。また、条件の成就・不成就が新憲法の施行前に確定している場合には、その条件の内容が憲法に適合するかという憲法判断の対象とはならない。
重要事実
上告人の父Dは、債務弁済のため不動産を親族E・Fに売却し、後に被上告人(Dの弟)がこれを買い受けた。その際、被上告人と上告人との間で、上告人が「東京から帰郷すること」を条件に当該不動産を譲渡する旨の契約が締結された。しかし、上告人はDが生存している間(昭和20年8月まで)に帰郷せず、条件を履行しなかった。上告人は、この「帰郷」という条件は自由を拘束する不当なものであり、憲法にも違反すると主張して争った。
事件番号: 昭和39(オ)183 / 裁判年月日: 昭和41年9月20日 / 結論: 破棄差戻
一たん適法に提出された農地法第五条所定の知事に対する許可申請書が、原判決判示(本判決理由参照)のような実際上の理由から便宜的に返戻され、手続上は申請の任意撤回として処理された場合には、いまだ売買の法定条件不成就が確定したものとはいえず、売主は、再度許可申請手続をして知事の正式な許否の処分を求めることに協力する義務を免れ…
あてはめ
まず、本件の条件(帰郷)は不動産譲渡に伴うものであり、これによって直ちに上告人の個人的自由が余儀なく拘束されるとは認められないため、不法な条件とはいえない。次に、本件条件はDの生存中に履行されることを前提とした趣旨であり、Dが昭和20年8月に死亡した時点で不成就が確定している。憲法は昭和22年施行であるから、施行前に確定した条件の成否について、事後的に憲法違反の問題が生ずる余地はないと解される。
結論
本件条件は有効であり、かつ不成就が確定しているため、上告人は譲渡契約に基づく権利を主張できない。上告を棄却する。
実務上の射程
契約自由の原則に基づき、一定の生活上の選択(帰郷等)を条件とする付款の有効性を肯定した事例である。ただし、現代の視点では公序良俗(民法90条)の解釈においてより慎重な検討を要する可能性がある。また、憲法の遡及適用を否定する判断枠組みとしても参照される。
事件番号: 昭和27(オ)108 / 裁判年月日: 昭和28年10月22日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】特定の条件が成就するまでの間、一時的に所有権を移転させる合意は仮装のものに過ぎず、真実の所有権移転の効力は生じない。また、他主占有権原に基づき、かつ善意等の要件を欠く場合には、取得時効は成立しない。 第1 事案の概要:被上告人と訴外Dとの間で、本件不動産の所有権移転契約が締結された。しかし、その実…
事件番号: 昭和31(オ)773 / 裁判年月日: 昭和33年4月22日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】民法579条の要件を満たさない買戻しの特約であっても、公序良俗に反する等の事情がない限り、契約自由の原則に基づき有効である。また、事情変更の原則の適用には、当初の契約を維持することが信義則に著しく反するほどの重大な事情の変更が必要である。 第1 事案の概要:被上告人(売主)は、昭和20年4月19日…
事件番号: 昭和28(オ)1048 / 裁判年月日: 昭和30年9月27日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】調停において、将来の債務不履行を条件として目的物の売買契約を成立させる旨の合意をすることは、当事者の自由な意思に基づく行為であり、それ自体が権利の行使ではないため権利濫用の問題は生じない。また、前提となる明渡請求等に権利濫用の余地があっても、そのこと自体が直ちに売買の合意という意思表示の効力に影響…
事件番号: 昭和30(オ)995 / 裁判年月日: 昭和33年6月5日 / 結論: 棄却
一 知事の許可を停止条件として締結された農地の売買契約は、無効ではない 二 土地の買主が約定の履行期後、売主に対し、しばしばその履行を求め、かつ売主において右土地の所有権移転登記手続をすれば、何時でも支払えるよう残代金の準備をしていたときは、民法第五五七条にいわゆる「契約の履行に著手」したものと認めるのが相当である