参議院(比例代表選出)議員の選挙後に名簿届出政党等から選挙長に対し当選人とならなかった次順位の名簿登載者甲の除名届がされ、その後欠員が生じたため甲より後順位の名簿登載者乙が繰上補充による当選人と決定された場合、甲の除名が不存在又は無効であることは、右除名届が適法にされている限り、乙の当選無効の原因とならない。
参議院(比例代表選出)議員の選挙後に名簿届出政党等から当選人とならなかった次順位の名簿登載者の除名届がされた後欠員が生じ後順位の名簿登載者が繰上補充による当選人と決定された場合に右除名が不存在又は無効であることと後順位の名簿登載者の当選無効の原因
公職選挙法(平成6年法律第2号による改正前のもの)86条の2第5項,公職選挙法(平成6年法律第2号による改正前のもの)86条の2第6項,公職選挙法(平成6年法律第2号による改正前のもの)98条2項,公職選挙法(平成6年法律第2号による改正前のもの)98条3項,公職選挙法(平成6年法律第2号による改正前のもの)112条2項4項,公職選挙法(平成6年法律第2号による改正前のもの)208条,憲法21条1項
判旨
参議院比例代表選挙における名簿登載者の除名が客観的に無効であったとしても、政党から適法な形式で除名届が提出されている以上、これに基づく繰上補充による当選人決定は有効であり、当選訴訟における無効原因とはならない。
問題の所在(論点)
参議院比例代表選挙において、政党による名簿登載者の除名が実体法上無効である場合、当該除名届に基づいてなされた繰上補充による当選人決定は、公職選挙法208条の当選訴訟において無効となるか。
規範
政党は政治的信条を共通にする者の任意結社であり、高度の自主性と自律性を有することから、除名等の処分は原則として政党の自律的解決に委ねられる。公職選挙法が除名届出に際し形式的な文書提出のみを要求し、選挙会に実質的審査権を与えていないのは、この内部的自律権を尊重し行政権の介入を避ける趣旨である。したがって、当選訴訟(同法208条)において、選挙会等の判断に法の規定に照らした誤りがない限り、裁判所が独自の当選無効事由を設定することは許されず、除名の存否や効力は審理の対象とならない。
重要事実
日本新党は参議院比例代表選挙において、第5位の被上告人(次点)を除名した旨の届出を選挙長に行った。この届出には、法所定の除名手続書及び適正手続の宣誓書が添付されていた。その後、上位当選者の辞職等に伴う欠員が生じた際、選挙会は被上告人を除外した上で、第6位及び第7位(参加人)を繰上当選人と決定した。被上告人は、当該除名が適正手続を欠き公序良俗に反して無効であるから、これに基づく当選人決定も無効であると主張して当選訴訟を提起した。
あてはめ
本件における日本新党の除名届には、法が要求する除名手続書及び代表者による宣誓書が添えられており、形式的に適法な届出がなされている。公職選挙法上、選挙会は届出書の形式的備えを審査すれば足り、除名の効力を審査する権限も義務も有しない。選挙会が法の規定に従い、除名届を前提として次順位者を当選人と定めた判断に過誤はない。政党の自律性を尊重すべき立法の趣旨に鑑みれば、除名の有効性を当選訴訟の審理対象とすることは、実定法上の根拠なく独自の無効事由を設けることに等しく、許されない。したがって、除名が無効であるか否かを論ずるまでもなく、本件当選人決定は適法であると評価される。
結論
名簿登載者の除名が不存在又は無効であっても、法所定の除名届が適法になされている限り、当選訴訟における当選無効の原因とはならない。よって、本件当選人決定は有効である。
実務上の射程
行政法・憲法における「政党の自律性」と「司法審査の限界」に関する重要判例である。部分社会の法理との親和性も高い。答案上は、公職選挙法の形式的要件の充足がなされている場合に、実体的な処分の当否を理由として行政処分(当選人決定)を争えるかという文脈で使用する。法律の文言を超えた無効事由の創設を否定する態度は、行政訴訟の一般的法理としても参照しうる。
事件番号: 令和2(行ツ)79 / 裁判年月日: 令和2年10月23日 / 結論: 棄却
参議院(比例代表選出)議員の選挙についていわゆる特定枠制度を定める平成30年法律第75号による改正後の公職選挙法の規定は,憲法43条1項等に違反するものではない。 (意見がある。)