公職選挙法が参議院(比例代表選出)議員選挙につき採用している非拘束名簿式比例代表制は,憲法15条,43条1項に違反するとはいえない。
公職選挙法が参議院(比例代表選出)議員選挙につき採用している非拘束名簿式比例代表制の合憲性
憲法15条,憲法43条1項,公職選挙法46条3項,公職選挙法86条の3,公職選挙法95条の3
判旨
参議院選挙の非拘束名簿式比例代表制は、政党本位の制度でありつつ特定候補者の選択も可能にするものであり、国会の広範な裁量権の範囲内として合憲である。候補者名による投票を政党への投票とみなす仕組みや、直接選挙の原則との関係においても、合理性を欠くとはいえない。
問題の所在(論点)
非拘束名簿式比例代表制において、候補者名による投票を当該政党の得票として計算する仕組み、および個人得票に基づく当選順位の決定が、国会の裁量権の限界を超え、直接選挙の原則(憲法43条1項)や国民の選挙権(憲法15条)に違反するか。
規範
選挙制度の具体的決定は、原則として国会の裁量に委ねられている(憲法43条、47条)。したがって、国会が採用した新たな選挙制度が憲法に違反するのは、その具体的定めたところが、国会の裁量権を考慮してもなお、国民の代表制や法の下の平等などの憲法上の要請に反し、その限界を超えていると認められる場合に限られる。
重要事実
平成12年の公職選挙法改正により、参議院比例代表選挙に「非拘束名簿式」が導入された。これは、有権者が「政党名」または「候補者名」で投票し、①政党の総得票数に応じて議席数を配分した後、②政党内での当選順位は候補者個人の得票数順で決定する仕組みである。上告人は、候補者個人への投票を政党への投票とみなす点や、超過得票の流用が直接選挙に反する点などを理由に、本制度が憲法15条、43条1項等に違反すると主張した。
あてはめ
まず、政党は議会制民主主義を支える不可欠の要素であり、政党を媒体とする比例代表制の採用は国会の裁量の範囲内である。非拘束名簿式は、各政党に所属する者として立候補する制度であるから、候補者名の投票を政党への投票として計算することには合理性が認められる(憲法15条不適合なし)。次に、当選人が「選挙人の総意(投票結果)」により決定される点は、候補者個人を直接選択する方式と本質的に異ならず、くじによる順位決定も第三者の意思を介在させるものではないため、直接選挙の原則に反しない(憲法43条1項不適合なし)。さらに、本制度は拘束名簿式の批判(候補者の顔が見えない等)を改善する正当な目的があり、手段としての合理性も認められる。
結論
本件非拘束名簿式比例代表制の規定は、国会の裁量権の限界を超えるものではなく、憲法15条、43条1項等に違反しない。本件選挙は有効である。
実務上の射程
選挙制度の合憲性判定における「国会の広範な裁量」を再確認した判例である。答案上は、投票方法や議席配分方法といった「制度の仕組み」が問われた際、一票の較差(平等権)の問題とは区別し、本判例の裁量論(裁量の逸脱・濫用があるか)を基礎に論じるのが適切である。
事件番号: 平成11(行ツ)8 / 裁判年月日: 平成11年11月10日 / 結論: 棄却
一 所定の要件を充足する政党その他の政治団体に所属する候補者に限り衆議院小選挙区選出議員の選挙と衆議院比例代表選出議員の選挙とに重複して立候補することを認め、重複立候補者が前者の選挙において当選人とされなかった場合でも後者の選挙においては候補者名簿の順位に従って当選人となることができるなどと定めている公職選挙法の規定は…