一 公職選挙法が衆議院議員選挙につき採用している小選挙区制は、憲法の国民代表の原理等に違反するとはいえない。 二 衆議院小選挙区選出議員の選挙において候補者届出政党に政見放送その他の選挙運動を認める公職選挙法の規定は、候補者届出政党に所属する候補者とこれに所属しない候補者との間に選挙運動の上で差異を生ずるものであるが、その差異が一般的に合理性を有するとは到底考えられない程度に達しているとは断定し難く、憲法一四条一項に違反するとはいえない。 (二につき反対意見がある。)
一 公職選挙法が衆議院議員選挙につき採用している小選挙区制の合憲性 二 衆議院小選挙区選出議員の選挙において候補者届出政党に選挙運動を認める公職選挙法の規定の合憲性
憲法43条1項,公職選挙法13条1項,公職選挙法95条1項,憲法14条1項,公職選挙法131条1項,公職選挙法141条1項,公職選挙法141条2項,公職選挙法141条7項,公職選挙法141条の2第1項,公職選挙法142条1項,公職選挙法142条2項,公職選挙法142条9項,公職選挙法143条1項,公職選挙法143条3項,公職選挙法144条1項,公職選挙法144条4項,公職選挙法149条1項,公職選挙法150条1項,公職選挙法150条4項,公職選挙法151条の5,公職選挙法161条1項,公職選挙法161条の2
判旨
衆議院選挙における小選挙区制の採用、都道府県別の一人別枠方式を伴う定数配分規定、および政党所属候補者と無所属候補者間の選挙運動の差異は、いずれも国会の合理的裁量の範囲内であり、憲法に違反しない。
問題の所在(論点)
1. 衆議院選挙における小選挙区制の採用が国民代表の原理に反し違憲か。2. 一人別枠方式による最大較差2.3倍超の区割規定が投票価値の平等(憲法14条1項)に反し違憲か。3. 政党所属・無所属による選挙運動の差異が立候補の自由や平等原則に反し違憲か。
規範
選挙制度の具体的決定は国会の広い裁量に委ねられており、その決定が憲法上の制約や法の下の平等に反し、裁量の限界を超えて是認できない場合に初めて違憲となる。投票価値の平等は、国会が正当に考慮できる他の政策的目的(都道府県という単位、地勢、交通等)と調和的に実現されるべきであり、不平等が諸般の要素を斟酌しても一般に合理性を有しない程度に達している場合に、裁量の限界を超えると判断される。また、選挙運動の差異については、政策本位・政党本位の選挙を実現するという正当な目的があり、その差異が一般に合理性を有しない程度に達していない限り合憲である。
重要事実
平成6年の公職選挙法改正により、衆議院選挙に小選挙区比例代表並立制が導入された。小選挙区の画定にあたっては、各都道府県にまず1議席を配分し、残りを人口比例で配分する「一人別枠方式」が採用された。その結果、最大較差は1対2.309となった。また、選挙運動において、政党届出候補者には政党による上積み支援や政見放送が認められる一方、無所属候補者にはこれらが認められないという差異が生じた。
あてはめ
1. 小選挙区制は死票を生むが、民意の集約や政権交代の促進という合理的な目的があり、憲法が禁ずる特定の政党にのみ有利な制度とはいえない。2. 都道府県は政治・行政上の基礎的単位であり、一人別枠方式は人口の少ない県の意見を反映させる政策的目的がある。最大較差2.3倍は、二倍未満という基準を重視しつつも、裁量の合理的行使として是認できないほど不合理な程度に達しているとはいえない。3. 政策本位・政党本位の選挙の実現は正当な目的である。政見放送の差異には疑問の余地があるものの、他の選挙運動手段が確保されており、全体として合理性を欠く決定的な差異とは断定できない。
結論
小選挙区制、定数配分規定、および選挙運動に関する各規定は、いずれも国会の合理的裁量の範囲内であり、憲法14条1項、43条、47条等に違反しない。
実務上の射程
選挙制度に関する国会の「広い裁量」を強調するリーディングケース。一人別枠方式については後の判例で「構造的な不平等」として否定的な評価に転じるが、本判決の「裁量論」の枠組み自体は現在も基本論理として維持されている。答案では、投票価値の平等が「唯一絶対の基準ではない」とする論証に活用する。
事件番号: 平成11(行ツ)8 / 裁判年月日: 平成11年11月10日 / 結論: 棄却
一 所定の要件を充足する政党その他の政治団体に所属する候補者に限り衆議院小選挙区選出議員の選挙と衆議院比例代表選出議員の選挙とに重複して立候補することを認め、重複立候補者が前者の選挙において当選人とされなかった場合でも後者の選挙においては候補者名簿の順位に従って当選人となることができるなどと定めている公職選挙法の規定は…