一 所定の要件を充足する政党その他の政治団体に所属する候補者に限り衆議院小選挙区選出議員の選挙と衆議院比例代表選出議員の選挙とに重複して立候補することを認め、重複立候補者が前者の選挙において当選人とされなかった場合でも後者の選挙においては候補者名簿の順位に従って当選人となることができるなどと定めている公職選挙法の規定は、憲法一四条一項、一五条一項、三項、四三条一項、四四条に違反するとはいえない。 二 公職選挙法が衆議院議員選挙につき採用している比例代表制は、憲法一五条一項、三項、四三条一項に違反するとはいえない。
一 公職選挙法が衆議院議員選挙につき採用している重複立候補制の合憲性 二 公職選挙法が衆議院議員選挙につき採用している比例代表制の合憲性
憲法15条1項,憲法15条3項,憲法43条1項,公職選挙法86条の2,公職選挙法95条の2,憲法14条1項,憲法44条,公職選挙法87条,公職選挙法46条2項
判旨
衆議院選挙の重複立候補制及び政党要件による差別化は、政策本位・政党本位の選挙を実現するという目的において相応の合理性があり、国会の広い裁量権の範囲内として憲法14条1項等に違反しない。また、惜敗率による順位決定も投票結果に基づき当選人が決まる以上、憲法43条1項等の直接選挙の原則に反しない。
問題の所在(論点)
1. 重複立候補制及び政党所属の有無による立候補機会の差異は、憲法14条1項、15条、44条等に違反するか。 2. 惜敗率等により事後的に当選順位が確定する仕組みは、憲法43条1項等の直接選挙の原則に反するか。
規範
選挙制度の具体的決定は、国会の広い裁量に委ねられており、具体的な定めが憲法上の要件に反し、裁量権の限界を超えて是認できない場合に初めて憲法違反となる。被選挙権や立候補の自由の制限については、合理的な理由があるか否かが基準となる。また、直接選挙とは投票結果(選挙人の総意)により当選人が決定されることを指し、個々の候補者を直接選択する方式に限定されない。
重要事実
平成6年の公職選挙法改正により、衆議院議員選挙に小選挙区比例代表並立制が導入された。同法は、特定の要件を満たす政党(候補者届出政党等)に所属する候補者にのみ、小選挙区と比例代表への重複立候補を認め、落選者も惜敗率により比例代表で復活当選できる仕組みを採用した。これに対し、政党非所属の候補者らとの差別遇や、落選者の当選が民意に反すること、当選順位が事後的に決まる点が直接選挙原則に反すること等を理由に、選挙無効が争われた。
あてはめ
1. 選挙制度を「政策本位・政党本位」に改めるという目的には正当性がある。政党の国政上の役割に鑑み、重複立候補の権利を一定の要件を満たす政党所属者に限定することには相応の合理性があり、不当な制限とはいえない。選挙運動の規模の差異も合理的理由に基づく裁量の範囲内である。 2. 比例代表制において、政党が提示した名簿に基づき、投票結果(得票数や惜敗率)によって自動的に当選順位が決まる仕組みは、最終的に「投票の結果」によって当選人が決定されている。したがって、直接選挙の趣旨を損なうものではない。
結論
本件各規定は国会の裁量の限界を超えたものとはいえず、憲法14条1項、15条、43条1項、44条等に違反しないため、本件選挙は有効である。
実務上の射程
選挙制度に関する国会の広範な立法裁量を再確認した判例である。14条1項の平等原則違反が問題となる場面では「合理的な理由」の有無を検討し、特に対象が「政党」に関連する場合は、その憲法上の機能に鑑みた目的の正当性が肯定されやすい。直接選挙については、投票と当選人決定の間の因果的関連性が維持されていれば、算定方式の複雑さは許容される。
事件番号: 平成11(行ツ)7 / 裁判年月日: 平成11年11月10日 / 結論: 棄却
衆議院議員選挙区画定審議会設置法三条の衆議院小選挙区選出議員の選挙区割りの基準を定める規定は、憲法一四条一項、四三条一項に違反するものとはいえず、右基準に従って定められた公職選挙法一三条一項、別表第一の右区割りを定める規定は、平成八年一〇月二〇日施行の衆議院議員選挙当時、憲法一四条一項、四三条一項に違反していたものとい…