平成六年法律第四七号による参議院(選挙区選出)議員の議員定数配分規定の改正の結果、選挙区間において、同二年の国勢調査による人口に基づく議員一人当たりの人口及び右改正当時における議員一人当たりの選挙人数にそれぞれ最大一対四・八一及び最大一対四・九九の較差が残ることとなったとしても、右改正をもって国会の立法裁量権の限界を超えるものとはいえず、右改正後の議員定数配分規定の下において、人口を基準とする右較差は同七年一〇月の国勢調査結果によれば最大一対四・七九に縮小し、同一〇年七月一二日施行の参議院議員選挙当時における選挙人数を基準とする右較差は最大一対四・九八であったことなどにかんがみると、公職選挙法一四条、別表第三の参議院(選挙区選出)議員の議員定数配分規定は、右選挙当時、憲法一四条一項に違反していたものということはできない。 (反対意見がある。)
公職選挙法一四条、別表第三の参議院(選挙区選出)議員の議員定数配分規定の合憲性
憲法14条1項,公職選挙法14条,公職選挙法別表第3
判旨
参議院議員選挙の定数配分において、都道府県を単位とする仕組みから生じる最大4.98倍の投票価値の較差は、選挙制度の目的や国会の裁量権に照らし、憲法14条1項に反する著しい不平等状態には至っていない。
問題の所在(論点)
参議院選挙区選出議員の定数配分規定が、投票価値の平等を要求する憲法14条1項、15条1項、44条等に違反し、国会の立法裁量の限界を超えているか。
規範
投票価値の平等は憲法上の要求であるが、選挙制度の決定は国会の広い裁量に委ねられている。投票価値の平等は他の政策的目的との関連で調和的に実現されるべきものであり、人口比例主義を基本的基準としつつも、参議院の独自性や都道府県の意義を考慮した制度設計において生じる較差が、裁量権の行使として合理性を是認できる範囲内であれば合憲とされる。具体的には、投票価値の不平等が到底看過できないほど著しい状態にあり、かつ、それを是正しないことが裁量の限界を超えると判断される場合に初めて違憲となる。
重要事実
参議院議員選挙(選挙区選出)において、都道府県を単位とする選挙区制度が維持されていた。平成6年の法改正により「4増4減」の是正が行われた結果、最大較差は1対6.48から1対4.81に縮小し、逆転現象も解消された。しかし、本件選挙(平成10年施行)当時、人口移動により選挙人数を基準とする最大較差は1対4.98(東京都と鳥取県)に達していたため、選挙人が定数配分規定の違憲を訴えた。
あてはめ
参議院は二院制の趣旨から衆議院とは異なる独自の内容・機能を持ち、特に選挙区選出議員には都道府県という政治的まとまりの意思を反映させる意義がある。本件改正は較差是正を目的として行われ、最大較差を5倍未満に抑え逆転現象も解消した。この較差は、参議院の選挙制度の仕組みにおいて投票価値の平等の重要性に照らしても、到底看過できないほどの著しい不平等に達しているとはいえず、定数配分を安定させるという立法政策上の合理性も認められる。
結論
本件定数配分規定は、本件選挙当時において憲法14条1項等の規定に違反するに至っていたものとはいえず、合憲である。
実務上の射程
参議院選挙の合憲性判断においては、衆議院(1対2〜3倍程度が目安)よりも広い裁量を認め、都道府県代表的要素を考慮した「5倍程度」の較差を許容する枠組みとして機能する。ただし、その後の判例(平成24年以降)では「都道府県単位」の区割りの見直しを求めるなど、本判決より厳格な審査へと移行している点に注意が必要である。
事件番号: 昭和62(行ツ)14 / 裁判年月日: 昭和62年9月24日 / 結論: 棄却
公職選挙法一四条、同法別表第二の参議院選挙区選出議員の議員定数配分規定は、昭和五八年六月二六日の参議院議員選挙当時、憲法一四条一項、一五条一ないし三項、四三条一項、四四条但し書に違反するに至つていたものとはいえない。