公職選挙法(平成18年法律第52号による改正前のもの)14条,別表第3の参議院(選挙区選出)議員の議員定数配分規定は,平成16年7月11日施行の参議院議員選挙当時,憲法14条1項に違反していたものということはできない。 (補足意見及び反対意見がある。)
公職選挙法(平成18年法律第52号による改正前のもの)14条,別表第3の参議院(選挙区選出)議員の議員定数配分規定の合憲性
憲法14条1項,公職選挙法(平成18年法律第52号による改正前のもの)14条,別表第3
判旨
参議院議員通常選挙の定数配分規定(いわゆる都道府県単位の選挙区制と1人欠員制)について、最大格差が5.06倍に達していた状態は、憲法の要求する投票価値の平等の要請に照らし、正当な理由なき差別として違憲状態にあるが、是正のための合理的期間を経過していないため、直ちに憲法違反とはいえない。
問題の所在(論点)
参議院議員選挙における都道府県を単位とする定数配分規定により、最大5.06倍の格差が生じている状態は、憲法14条1項、44条ただし書に違反するか。
規範
憲法14条1項、44条等は投票価値の平等を要求している。参議院議員の定数配分は国会の広範な裁量に委ねられているが、投票価値の不平等が、選挙制度の仕組みとして国会に付与された裁量権の限界を超えて、なお正当化すべき合理的理由が認められない程度に至っている場合には、当該定数配分規定は憲法に違反する。この判断にあたっては、投票価値の平等の重要性と、国会が参議院の独自性(都道府県の代表的性格等)を考慮したことの合理性を総合的に衡量し、是正措置を講じないことが裁量の逸脱と認められるか否かで判断すべきである。
重要事実
1. 平成10年当時の参議院選挙区定数配分では、兵庫選挙区と鳥取選挙区の間で最大5.06倍の格差が生じていた。2. 参議院は3年ごとに半数を改選するため、全定数を一度に是正することが構造的に困難である。3. 参議院には都道府県を単位とする地域代表的な機能が期待されており、当時の制度は各都道府県に最低1名を割り当てる仕組みを維持していた。4. 国会は平成6年に一部の定数増減(「4増4減」)を行うなど、一定の是正努力を試みていた。
あてはめ
まず、5.06倍という格差は、国民の意見を公正・平等に反映させるべき民主主義の原則からみて、投票価値の著しい不平等が生じているといえる。国会は参議院の独自性(地域代表的性格)を理由に都道府県単位の制度を維持しているが、それにより生じる格差が5倍を超えることは、裁量権の限界に近い。しかし、参議院の半数改選という特殊性や、国会が格差是正に向けて段階的な定数増減(平成6年改正等)を行っていた事実を考慮すると、本件の格差が直ちに合理的理由を欠く明白な差別であると断定することは困難である。また、是正には複雑な立法政策を要するため、是正のための「合理的期間」を徒過したとも言い切れない。
結論
本件定数配分規定は、憲法の要求する投票価値の平等に反する著しい不平等状態にあるが、国会の裁量権の限界を超えたとまではいえず、憲法違反には当たらない。
実務上の射程
参議院選挙の定数配分に関し、都道府県単位の選出枠を維持しつつも、投票価値の平等を重視する姿勢を示した。その後の判例(平成24年大法廷判決等)により、都道府県単位の「合区」検討を促す契機となった重要な一歩である。
事件番号: 平成23(行ツ)64 / 裁判年月日: 平成24年10月17日 / 結論: 破棄自判
公職選挙法14条,別表第3の参議院(選挙区選出)議員の議員定数配分規定の下で,平成22年7月11日施行の参議院議員通常選挙当時,選挙区間における投票価値の不均衡は違憲の問題が生ずる程度の著しい不平等状態に至っていたが,上記選挙までの間に上記規定を改正しなかったことが国会の裁量権の限界を超えるものとはいえず,上記規定が憲…