土地の賃借人が賃貸人から提起された建物収去土地明渡請求訴訟の事実審口頭弁論終結後に建物買取請求権を行使した場合、その行使の効果は、建物収去土地明渡請求を認容する確定判決に対する請求異議の訴えにおける異議の事由となる。
建物収去土地明渡請求訴訟の事実審口頭弁論終結後における建物買取請求権の行使と請求異議の訴え
借地法4条2項,民事執行法35条
判旨
借地上の建物賃借人が、建物収去土地明渡請求の確定判決後に建物買取請求権を行使した場合、既判力による遮断を受けず、民事執行法35条2項の「口頭弁論の終結後に生じた」異議事由として請求異議の訴えを提起できる。
問題の所在(論点)
建物収去土地明渡請求の勝訴判決が確定した後、賃借人が建物買取請求権を行使したことが、民事執行法35条2項の異議事由(既判力の時間的限界)に該当するか。特に、形成権の行使が前訴で可能であった場合でも、既判力によって遮断されないかが問題となる。
規範
1. 建物買取請求権(借地法4条2項、現借地借家法13条1項)は、建物収去義務の発生原因に内在する瑕疵とは無関係に、独立した制度目的と原因に基づき発生する形成権である。 2. したがって、前訴の口頭弁論終結時までに同権利を行使しなかったとしても、実体法上その権利は消滅せず、訴訟法上も前訴確定判決の既判力によって主張が遮断されることはない。 3. 口頭弁論終結後に同権利を行使したことにより生じる建物収去義務の消滅は、民事執行法35条2項の「口頭弁論の終結後に生じた」事由に該当する。
重要事実
土地賃貸人が賃借人に対し、建物収去土地明渡請求訴訟を提起した。賃借人は、当該訴訟の事実審口頭弁論終結時までに建物買取請求権を行使せず、賃貸人の請求を認容する判決が確定した。その後、賃借人は建物買取請求権を行使し、当該確定判決に基づく強制執行の不許を求めて請求異議の訴えを提起した。
あてはめ
建物買取請求権が行使されると、法律上当然に建物の所有権が賃貸人に移転し、賃借人の建物収去義務は消滅する。この権利は、前訴で争われた明渡請求権そのものを基礎付ける権利関係(賃貸借の有無等)とは別個の独立した権利である。前訴でこれを行使しなかったことは実体法上の権利消滅事由ではないため、既判力による遮断は及ばない。ゆえに、口頭弁論終結後の行使という新たな事実によって義務消滅の効果が生じた以上、これは適法な異議事由となる。
結論
賃借人は、確定判決後の建物買取請求権行使を理由として請求異議の訴えを提起し、強制執行の阻止を主張することができる。
実務上の射程
形成権の行使と既判力の遮断効に関する重要判例。相殺権など他の形成権とは異なり、建物買取請求権は前訴の請求(収去義務)と質的に異なる独立の権利であるため、前訴で行使可能であっても遮断されないとする点に特徴がある。執行阻止の手段として民執法35条2項と絡めて論述する際に必須の法理である。
事件番号: 昭和37(オ)1191 / 裁判年月日: 昭和40年12月21日 / 結論: 棄却
確定判決が第三者を害する意図のもとに当事者の通謀により裁判所を欺罔して取得されたものであるとしても、右事実の存在を理由に、請求異議の訴をもつて前記確定判決の執行力の排除を求めることは許されない。