確定判決が第三者を害する意図のもとに当事者の通謀により裁判所を欺罔して取得されたものであるとしても、右事実の存在を理由に、請求異議の訴をもつて前記確定判決の執行力の排除を求めることは許されない。
当事者の通謀による確定判決の取得と請求異議の訴の許否。
民訴法545条
判旨
確定判決が当事者間の通謀による欺罔で取得された場合であっても、既判力の基準時前の事由を請求異議の理由とすることは許されない。ただし、基準時後の事情変更により確定判決に基づく執行が権利濫用に該当する場合には、例外的に請求異議が認められる余地があるが、本件の事実関係ではこれに当たらない。
問題の所在(論点)
確定判決が第三者を害する意図で通謀により取得された場合、既判力の基準時前の事由を理由として請求異議の訴えを提起できるか。また、基準時後の事情として、競落による損害発生の事実が「権利濫用」による執行力排除の根拠となりうるか。
規範
確定判決に既判力を認めた趣旨は、基準時以前の事実に基づく争いを禁じ、法的安定を図る点にある。したがって、判決取得過程に当事者の通謀等の重大な瑕疵がある場合でも、再審の訴えによる取消しがない限り、既判力・執行力は否定されない。もっとも、既判力の基準時以後に生じた事情変更により、確定された請求権の行使が権利濫用(民法1条3項)に該当する場合には、請求異議の訴え(民訴執行法35条)により執行力の排除が認められうる。
重要事実
賃貸人(被上告人)が賃借人(訴外D)と通謀し、Dの賃借権を仮装的に消滅させた。その上で、建物の競落を妨害する目的で、Dに対し建物収去土地明渡の確定判決を取得した。その後、事情を知らない上告人が建物を競落したが、被上告人は前記判決に基づき強制執行を申し立てた。上告人は、判決取得過程の欺罔や不当性を理由に請求異議の訴えを提起した。
あてはめ
まず、上告人が主張する通謀や欺罔の事実はすべて基準時前の事由であり、既判力の遮断効を受けるため、これを請求異議の理由とすることはできない。次に、基準時後の事情として、上告人が判決の存在を知らずに競落し、建物収去により損害を被る点は認められるが、これのみでは確定された明渡請求権の行使を社会的に容認できない権利濫用と評価するには足りない。したがって、権利濫用を理由とした執行力排除の余地はない。
結論
本件の上告人主張の事由は請求異議の理由に該当せず、強制執行の不許を求めることはできない。
実務上の射程
既判力の遮断効の原則を維持しつつ、判決確定後の「権利濫用」という構成で執行力を排除する理論的可能性を提示した点に意義がある。答案では、基準時前の事由については既判力の趣旨から厳格に否定し、基準時後の事情については権利濫用の成否を厳格に検討する枠組みとして活用すべきである。
事件番号: 昭和41(オ)661 / 裁判年月日: 昭和43年9月6日 / 結論: 棄却
建物収去土地明渡および金銭支払を命じた確定判決を得た債権者が、廃材としての時価が金四万円をこえない右建物に対し、自らこれを競落して収去する予定のもとに、右確定判決に基づいてまず強制競売の申立をしたところ、予想に反して最低競売価額が金一四八万円と定められたにもかかわらず、そのまま競売手続が進行するに任せ、そのために、名義…