被保険者が配偶者に対して負担する損害賠償責任について保険会社の保険金支払義務の免責を定める自家用自動車保険普通保険約款の第一章賠償責任条項八条三号にいう「配偶者」には、内縁の配偶者も含まれる。
自家用自動車保険普通保険約款の第一章賠償責任条項八条三号の免責条項にいう「配偶者」と内縁の配偶者
民法91条,商法629条
判旨
自家用自動車保険普通保険約款の免責条項にいう「配偶者」には、法律上の配偶者のみならず、内縁の配偶者も含まれる。約款の同一章内における文言の統一的解釈と、家庭内での損害賠償請求が稀であるという免責趣旨の妥当性に基づき判断される。
問題の所在(論点)
自家用自動車保険普通保険約款上の「配偶者に対して負担した損害賠償責任」に基づく保険金の支払を免れるとする免責条項において、当該「配偶者」に法律上の配偶者だけでなく内縁の配偶者も含まれるか。
規範
1. 損害保険約款の同一の章において使用される同一の文言は、特段の事情のない限り、当該章を通じて統一的・整合的に解釈するのが合理的である。 2. 賠償責任保険における配偶者免責条項の趣旨は、一般に家庭生活を営む夫婦間では損害賠償請求権が行使されないのが通例であることに鑑み、保険会社の支払義務を一律に免除する点にある。この趣旨は法律上の配偶者と内縁の配偶者で等しく妥当する。
重要事実
記名被保険者Dは、被上告会社との間で自家用自動車保険契約を締結していた。当該保険約款には、被保険者がその「配偶者」に対して損害賠償責任を負担した場合には保険金を支払わない旨の免責条項(本件免責条項)があった。Dは、普通乗用車を運転中に中央分離帯に衝突する事故を起こし、助手席に同乗していた内縁の妻Eを死亡させた。Eの共同相続人である上告人らが、被上告会社に対し、直接請求権に基づき損害賠償額の支払を求めた事案である。
あてはめ
1. 本件約款の同一章(賠償責任条項)内の別規定では、被保険者の範囲を拡張する文脈で「配偶者」の語が用いられている。内縁の配偶者も自動車の使用頻度が高い点では法律上の配偶者と差異がなく、これを含めて解すべきである。同一章内の文言を異ならせるべき特段の事情はないため、本件免責条項の「配偶者」も同様に解すべきである。 2. 免責条項の趣旨である「家庭内での請求の稀少性」は、実質的に夫婦の実態を有する内縁関係にも等しく妥当する。 3. 本件事故当時、DとEは内縁関係にあったため、Eは本件免責条項にいう「配偶者」に該当すると評価される。
結論
本件免責条項にいう「配偶者」には内縁の配偶者も含まれるため、被上告会社は保険金の支払義務を免れる。したがって、上告人らの請求は認められない。
実務上の射程
約款解釈における「同一章内での統一的解釈」という解釈手法を示した点に実務上の意義がある。対人賠償保険だけでなく、対物賠償や特約の解釈においても、被保険者範囲の定義規定と免責規定の整合性を取る際の有力な根拠となる。答案上は、約款の文言解釈の妥当性を基礎付ける際に「規定の趣旨」と「約款内の体系的整合性」の二点から論述する。
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