一 内縁の配偶者は、自動車損害賠償保障法七二条一項にいう「被害者」に当たる。 二 自動車損害賠償保障法七二条一項により死亡者の相続人に損害をてん補すべき場合において、既に死亡者の内縁の配偶者が同条項により扶養利益の喪失に相当する額のてん補を受けているときは、右てん補額は、相続人にてん補すべき死亡者の逸失利益の額からこれを控除すべきである。
一 内縁の配偶者と自動車損害賠償保障法七二条一項にいう「被害者」 二 自動車損害賠償保障法七二条一項により死亡者の相続人に損害をてん補すべき場合に既に死亡者の内縁の配偶者が同条項によりてん補を受けた扶養利益の喪失に相当する額を死亡者の逸失利益の額から控除することの要否
自動車損害賠償保障法72条1項
判旨
内縁の配偶者は自賠法72条1項の「被害者」に当たり、政府が内縁の配偶者に支払った扶養利益喪失相当の損害てん補額は、相続人が請求する死亡被害者の逸失利益から控除される。
問題の所在(論点)
自賠法72条1項に基づく自動車損害賠償保障事業において、内縁の配偶者が同項の「被害者」に含まれるか。また、政府が内縁の配偶者に支払った扶養利益相当額を、相続人が請求する死亡被害者の逸失利益から控除できるか。
規範
1. 自賠法72条1項にいう「被害者」とは、保有者に対して損害賠償の請求をすることができる者をいう。 2. 内縁の配偶者が他方の配偶者の扶養を受けている場合、その他方の配偶者が自動車の運行により死亡したときは、内縁の配偶者は将来の扶養利益の喪失を損害として保有者に賠償請求できるため、同項の「被害者」に当たる。 3. 政府が死亡被害者の相続人の請求により損害をてん補すべき場合において、既に内縁の配偶者に扶養利益喪失相当額を支払ったときは、その額を死亡被害者の逸失利益から控除すべきである。なぜなら、死亡被害者の逸失利益は生存していれば得られたはずの利益であり、内縁の配偶者の扶養費はその利益から支出される性質のものだからである。
重要事実
1. 被害者Dは自動車事故により死亡した。Dには、Dの収入によって生計を維持していた内縁の配偶者Eがいた。 2. 上告人らはDの相続人(妹ら)であり、政府(被上告人)に対し、Dの死亡による損害(逸失利益等)のてん補を求めた。 3. 政府は、自賠法72条1項に基づき、既にEに対して扶養利益の喪失に相当する額(約700万円)を支払っていた。 4. 相続人らが請求する損害額から、政府がEに支払った右金額を控除できるか否かが争点となった。
あてはめ
1. 本件において、EはDの内縁の配偶者としてDから扶養を受けていた。Dの死亡によりEは将来の扶養利益を喪失しており、Dの保有者等に対して賠償請求権を有するため、自賠法72条1項の「被害者」に該当するといえる。 2. 政府がEに対して行った扶養利益相当額の支払いは、正当な損害のてん補である。 3. Dの逸失利益は、Dが生きていれば得られたはずの利益であり、Eの扶養費用はその中から支出されるべきものである。したがって、Eに支払われた扶養利益相当額は、実質的にDの逸失利益の一部を前払いしたのと同視できるため、相続人らが請求するDの逸失利益からこれを控除するのが論理的整合性に適うといえる。
結論
内縁の配偶者は自賠法72条1項の「被害者」に当たり、政府がこれに対して支払った扶養利益相当額は、相続人が請求する死亡被害者の逸失利益から控除される。
実務上の射程
自賠法上の「被害者」の範囲を不法行為法上の賠償請求権者とパラレルに解釈する実務を裏付ける。相続人と内縁の配偶者が共に損害を主張する場合の二重払いを回避するロジックとして、逸失利益と扶養費の関係性(扶養費は逸失利益から支出される)を用いた点は、損害論の一般原則としても重要である。
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