譲渡担保権者は、担保権を実行して確定的に抵当不動産の所有権を取得しない限り、民法三七八条所定の滌除権者たる第三取得者に当たらない。
譲渡担保権者と滌除権
民法369条(譲渡担保),民法378条
判旨
譲渡担保権者は、担保権を実行して清算手続を完了し、確定的に不動産の所有権を取得しない限り、民法378条(改正前)所定の滌除権者たる第三取得者には該当しない。
問題の所在(論点)
清算手続を完了していない不動産譲渡担保権者が、民法378条(改正前)に規定される、抵当権の滌除(現行の抵当権消滅請求に相当)を行うことができる「所有権を取得した第三者」に該当するか。
規範
民法378条(現行の抵当権消滅請求)にいう「所有権を取得した第三者」とは、確定的に抵当不動産の所有権を取得した者を指す。譲渡担保においては、債権担保の目的で所有権移転の形式をとるにすぎず、清算手続が完了するまでは設定者に受戻権が認められるため、譲渡担保権者は「確定的に所有権を取得した者」には当たらない。したがって、清算手続完了前の譲渡担保権者は、抵当権を滌除(消滅請求)することができない。
重要事実
上告人(譲渡担保権者)は、Dに対する貸付債権の担保としてE所有の不動産に譲渡担保権の設定を受け、所有権移転登記を完了した。当該不動産には、被上告人を根抵当権者とする先順位の根抵当権が設定されていた。上告人は、被上告人からの根抵当権実行通知を受け、被上告人に対し3200万円での滌除を通知し、その後同額を供託した。しかし、滌除通知時点では被担保債務の弁済期が未到来であり、譲渡担保権の実行(清算通知等)は行われていなかった。
事件番号: 昭和38(オ)412 / 裁判年月日: 昭和39年8月13日 / 結論: 棄却
不動産所有権を取得したが本登記手続を経ない仮登記権利者は、右不動産上の抵当権者に対し被担保債務が弁済されたことを理由に当該抵当権設定登記の抹消登記手続を請求し得ない。
あてはめ
上告人が滌除の通知をした時点において、本件貸金債務の弁済期は未到来であり、譲渡担保権の実行には着手されていなかった。譲渡担保の性質上、清算手続を完了して確定的に所有権を取得しない限り、設定者の受戻権を封じ所有権を完全に自己に帰属させたとはいえない。上告人は本件滌除の行使時点において「確定的に本件不動産の所有権を取得していた」とは認められないため、法378条所定の第三取得者としての資格を欠く。
結論
清算手続を完了していない上告人による滌除権の行使は無効であり、根抵当権設定登記の抹消請求は認められない。
実務上の射程
現行民法の抵当権消滅請求(379条)においても、その主体は「抵当不動産の第三取得者」とされており、本判決の理屈はそのまま妥当する。答案上は、譲渡担保権者の法的地位が「担保目的の範囲内」に限定されることを理由に、確定的な所有権取得を要件とする他制度(379条等)の適用を否定する際の論拠として使用する。
事件番号: 昭和44(オ)1012 / 裁判年月日: 昭和45年2月24日 / 結論: 棄却
甲は、乙が代表者である丙組合と丁会社との紛争解決などのために、戊に合計九〇万円を融資し、その債務担保のため本件土地につき、戊から譲渡担保の設定を受け、一方、乙は、右のような事情から右担保権を取得した甲のために、その権利行使の障害となる根抵当権を自ら放棄したものであるなど判示事実関係のもとにおいては、乙は、その後戊との間…
事件番号: 平成3(オ)1334 / 裁判年月日: 平成5年6月25日 / 結論: 破棄自判
破産手続が終結した後における破産者の財産に関する訴訟については、当該財産が破産財団を構成し得るものであったとしても、追加配当を予定すべき特段の事情がない限り、破産管財人は被告適格を有しない。
事件番号: 平成9(オ)1771 / 裁判年月日: 平成11年10月21日 / 結論: 棄却
後順位抵当権者は、先順位抵当権の被担保債権の消滅時効を援用することができない。
事件番号: 平成5(オ)1788 / 裁判年月日: 平成8年7月12日 / 結論: 破棄差戻
物上保証人に対する不動産競売において、被担保債権の時効中断の効力は、競売開始決定正本が債務者に送達された時に生ずる。