債権の全額を破産債権として届け出た債権者は,債務者に対する破産宣告後に物上保証人から届出債権の弁済を受けても,その全部の満足を得ない限り,届出債権の全額について破産債権者としての権利を行使することができる。
債務者に対する破産宣告後に物上保証人から届出債権の一部の弁済を受けた破産債権者が権利を行使し得る範囲
破産法24条,破産法26条,民法351条,民法372条,民法502条1項
判旨
債権者が破産宣告時に債権全額を届け出た場合、その後に物上保証人(または担保不動産の第三取得者)から一部弁済を受けても、債権全額の満足を得ない限り、なお届出債権全額について権利を行使できる。
問題の所在(論点)
破産宣告時に債権全額を届け出た債権者が、宣告後に物上保証人(または第三取得者)から一部弁済を受けた場合、その弁済額を控除した残額についてのみ権利行使できるのか、それとも届出時の全額について行使できるのか。物上保証人等への旧破産法24条の類推適用の可否が問題となる。
規範
旧破産法24条(現行104条1項)は、全部義務者からの弁済後も債権者の権利行使を認めるが、その趣旨は、責任の集積により債権の効力を強化した目的に照らし、有限な破産財団から債権全額の満足を得る機会を保障することにある。物上保証人も、特定財産の限度での責任とはいえ、責任の集積により債権を強化する点では全部義務者と異ならない。したがって、同法26条3項(現行104条4項)の準用により、一部弁済した物上保証人の代位権行使は債権者が全額の満足を得るまで制限され、債権者は破産宣告時の債権額を維持できる。
重要事実
債権者である上告人は、債務者D社の破産宣告に際し、手形貸付金債権(約7069万円)を破産債権として届け出た。上告人はD社の所有不動産に根抵当権を有していたが、破産宣告後、当該不動産の第三取得者から、根抵当権の放棄と引換えに350万円の弁済を受けた。破産管財人(被上告人)は、この弁済額に相当する350万円について債権調査期日で異議を述べた。
あてはめ
本件において、上告人は破産宣告時に適法に全額を届け出ている。その後の350万円の受領は物上保証目的物の取得者からの代位弁済に準ずるものである。弁済による代位は、代位弁済者の求償権確保のための制度であり、債権者に不利益を及ぼすものではない。上告人は依然として届出債権全額の満足を得ていない以上、法26条2項・3項の趣旨に照らし、一部弁済を受けたからといって破産債権額を減じる必要はない。また、第三取得者からの弁済も物上保証人からの弁済と同様に解される。ゆえに、上告人は350万円を控除せず、届出全額について配当を受ける権利を有する。
結論
上告人は、届出債権全額の満足を得るまでは、一部弁済額を控除することなく、破産宣告時の債権全額について権利を行使することができる。
実務上の射程
破産手続における「宣告時現存額主義」の例外的な拡張を示す。連帯債務者(全部義務者)だけでなく、物上保証人や抵当不動産の第三取得者からの宣告後弁済についても、債権者の地位を優先させる実務上の重要な指針となる。
事件番号: 昭和52(オ)676 / 裁判年月日: 昭和53年5月2日 / 結論: 棄却
約束手形の所持人が、手形の買戻請求権ないし遡求権を行使することなく、振出人に対する手形債権と振出人の手形所持人に対する預金返還請求権とを対当額において相殺する意思表示をすることにより手形上の権利の満足実現を図つたために、手形の裏書人が買戻請求権ないし遡求権の行使を免れ、結果において利得するところがあつたとしても、裏書人…