法人は、民法三一〇条にいう債務者に含まれない。
法人と民法三一〇条にいう債務者
民法310条,民法306条4号
判旨
民法310条(日用品供給)の先取特権における「債務者」は自然人に限られ、法人は含まれない。たとえ個人会社のような小規模な法人であっても、その結論は左右されない。
問題の所在(論点)
民法306条4号及び310条に規定される日用品供給の一般先取特権において、その対象となる「債務者」に法人が含まれるか。
規範
民法310条の法意は、日常生活に必要不可欠な物の供給者に一般先取特権を付与することで、資力の乏しい者等による物資の入手を可能にし、その生活を保護することにある。かかる趣旨及び文言に照らせば、同条の「債務者」は自然人に限られる。仮に法人を含めるとすれば、先取特権の範囲の限定が著しく困難になり、一般債権者を不当に害するためである。
重要事実
上告人は、訴外の有限会社D(運動用品店)が破産宣告を受ける前に同社に対して水道水を供給した。上告人は、当該水道料金債権は日用品(飲食品)の供給に基づくものであり、民法306条4号、310条に基づき一般先取特権を有するため、破産法上の優先権ある破産債権に該当すると主張して争った。
事件番号: 平成12(受)1584 / 裁判年月日: 平成14年9月24日 / 結論: 破棄自判
債権の全額を破産債権として届け出た債権者は,債務者に対する破産宣告後に物上保証人から届出債権の弁済を受けても,その全部の満足を得ない限り,届出債権の全額について破産債権者としての権利を行使することができる。
あてはめ
本件における債務者は有限会社Dという法人である。日用品供給の先取特権の趣旨は自然人の生存権的配慮に基づく生活保護にあり、法人の活動を保護するものではない。法人の規模や経営態様が個人会社に近いものであったとしても、法人格を有している以上、自然人向けの生活保護規定を適用する余地はない。したがって、法人が債務者である場合には同条の適用は否定される。
結論
民法310条の債務者に法人は含まれないため、法人に対する水道水供給債権について一般先取特権は成立せず、優先権ある破産債権とは認められない。
実務上の射程
一般先取特権の債務者に関する限定解釈を明確にした判例である。答案上は、日用品供給の対象を「自然人」とその「同居の親族」等の生活維持に必要な範囲に限定する際の根拠として用いる。法人格の有無という形式的な基準を重視しており、実態が個人事業主と同様であっても射程が及ぶ点に注意が必要である。
事件番号: 昭和43(オ)1095 / 裁判年月日: 昭和44年9月2日 / 結論: 棄却
一、確定債権についての債権表の記載は確定判決と同一の効力を有するから、右債権表に記載された債権の消滅時効については、民法一七四条ノ二第一項により、その時効期間は一〇年であると解すべきである。 二、給料の後払いとしての性格を有する退職金債権については、その最後の六か月間の給料相当額について一般の先取特権があると解すべきで…