更生会社の管財人が数人あるにもかかわらず、そのうちの一人が、単独で、管財人の名称を使用して手形行為をした場合において、手形の取得者が、右一人の管財人が単独で手形行為をなすことができると信じて手形を取得し、更生会社においては、数人の管財人の間に会社更生法九七条一項但書の職務分掌の定めはなかつたが、右一人の管財人が更生会社の管財人として常勤し、他の管財人の同意のもとに事実上更生会社の経営部門の職務を担当し、自己の単独名義で手形行為をなすことを他の管財人が黙認していた事情があるときは、更生会社は、商法二六二条の類推適用により、手形行為者としての責に任じなければならない。
更生会社の管財人が数人あるのにそのうちの一人が単独で手形行為をした場合に商法二六二条の類推適用があるとされた事例
会社更生法97条1項,商法262条
判旨
数人の更生管財人が置かれた場合、原則として共同して職務を行うべきであるが、特定の管財人が単独で行った行為についても、他の管財人がその行為を黙認していたなどの特段の事情があるときは、商法262条(現行会社法354条)を類推適用して会社に責任を負わせることができる。
問題の所在(論点)
数人の更生管財人が置かれている場合において、一部の管財人が単独で行った手形行為(無権限行為)について、商法262条(現行会社法354条)を類推適用して更生会社に責任を負わせることができるか。
規範
更生会社の管財人が数人あるときは原則として共同してその職務を行うべきであり、単独で行われた行為は原則として無権限行為となる。もっとも、共同代表取締役の一人が単独で行った行為について商法262条(現行会社法354条)を類推適用し得るとする法理は更生管財人の場合にも妥当する。したがって、一部の管財人が単独で行為することについて、他の全管財人がこれを黙認するなど、代表権があるかのような外観の作出に帰責性がある等の特段の事情があり、相手方が善意である場合には、同条を類推適用して会社にその効力が帰属する。
重要事実
更生会社Dには3名の管財人(E、F、G)がいたが、会社更生法上の正式な職務分掌の定めはなかった。しかし事実上、Eが常勤して経営部門(取引や代金支払等)を担当し、他の管財人FおよびGは、Eが自己の単独名義で継続的に手形の振出や裏書を行っている事実を認識しながら、異議を述べずに黙認していた。本件各手形も同様にEの単独名義でなされたが、直接の相手方である被上告人は、取得時にEが単独で手形行為をなす権限があると信じていた。
あてはめ
本件では、管財人Eが経営実務を一手に担い、単独名義で手形行為を繰り返していた。他の管財人FおよびGは、この状況を把握しながら一切の異議を唱えず黙認していたといえる。これは、他の管財人らにおいて、Eに単独の権限があるかのような外観を放置・容認していた「特段の事情」にあたる。また、相手方はEに単独権限があると信じていたことから、保護すべき信頼が認められる。したがって、商法262条の類推適用により、更生会社Dは本件手形の支払責任を免れない。
結論
特段の事情がある場合には商法262条(現行会社法354条)が類推適用されるため、更生会社は単独名義でなされた手形行為について支払の責に任ずる。
実務上の射程
会社法354条の類推適用について、代表取締役以外の役職(管財人)や、共同代表の定めがある場合の単独行為への適用可能性を示す重要判例。答案では「外観の存在」「帰責性(黙認等)」「相手方の信頼」を要件として構成する際の論拠となる。
事件番号: 昭和41(オ)556 / 裁判年月日: 昭和46年12月23日 / 結論: 棄却
会社が自己の取締役が代表取締役を兼ねている他の会社に宛てて約束手形を振り出す行為は、原則として、商法二六五条にいわゆる取引にあたる。
事件番号: 平成12(受)1584 / 裁判年月日: 平成14年9月24日 / 結論: 破棄自判
債権の全額を破産債権として届け出た債権者は,債務者に対する破産宣告後に物上保証人から届出債権の弁済を受けても,その全部の満足を得ない限り,届出債権の全額について破産債権者としての権利を行使することができる。