併合罪として起訴された事実上、甲事実につき第一審において、乙事実につき控訴審において、丙事実につき上告審において順次無罪の判決があり、上告審が丙事実の裁判に要した費用を補償する場合において、甲、乙各事実についての無罪判決の各確定後刑訴法一八八条の三第二項所定の期間が経過しているときは、右各事実の裁判に要した費用の補償を請求することは許されない。
併合罪の各一部につき第一審控訴審及び上告審において順次無罪の判決があつた場合と費用の補償請求
刑訴法188条の3第1項,刑訴法188条の3第2項
判旨
複数の公訴事実のうち一部について無罪が確定した場合、刑事訴訟法188条の2第1項に基づく裁判費用の補償額は、無罪となった事実と他の事実が密接に関連し、証拠関係も共通して費用を区別できないときは、費用総額を相当の割合で案分して算出するのが相当である。
問題の所在(論点)
数個の公訴事実が併合審理され、その一部についてのみ期間内に適法な補償請求がなされた場合において、無罪となった事実と他の事実の裁判費用を区別できないときの補償額の算定手法が問題となる。
規範
被告人が無罪の判決を受けた場合、国は被告人であった者に対し、その裁判に要した費用を補償しなければならない(刑訴法188条の2第1項)。一部無罪の場合、無罪となった事実の裁判に要した費用が、有罪部分等の他の事実と区別できないときは、審理の経過、弁護人の活動、各事実の占める割合等を考慮し、各審級で生じた費用の総額を相当の割合で案分して算出する。
重要事実
請求人は複数の臓物故買事実で起訴されたが、第1審で一部(甲事実)が無罪となり、控訴審でさらに一部(乙事実)が無罪となった。残る事実(丙事実)について最高裁で逆転無罪が言い渡され、全事実について無罪が確定した。請求人は最高裁に対し、裁判費用の補償を請求した。なお、甲・乙各事実については無罪確定後6か月の請求期間(刑訴法188条の3第2項)を経過していた。
あてはめ
丙事実は他の事実(甲・乙)と同一の本犯からの臓物授受であり、相互に密接に関連し証拠関係も共通していた。そのため、第1審・第2審の各費用(弁護人報酬、旅費、日当)のうち、丙事実の裁判に要した分を他と明確に区別することはできない。そこで、各審級の審理経過や各事実が占める割合等を鑑みると、第1審および第2審の費用総額の各2分の1を丙事実分とするのが相当である。なお、最高裁での費用は全額が丙事実に関するものであるため案分を要しない。
結論
適法な請求期間内にある丙事実について、第1審・第2審の費用総額を各2分の1に案分した額と、最高裁での費用の全額を合算した金額を交付する。
実務上の射程
刑事訴訟費用補償の算定実務を画した事例。一部無罪や請求期間経過後の事実が混在する場合、弁護活動の不可分性を理由に全額を認めるのではなく、審理実態に応じた「相当な割合による案分」という枠組みを提示している。
事件番号: 昭和58(も)1 / 裁判年月日: 昭和59年11月30日 / 結論: その他
一 併合罪として起訴された事実中、甲事実につき第一審において、乙事実につき控訴審において、丙事実につき上告審において、順次無罪の判決があり、それぞれ当該審級で確定し、かつ、請求人に対する拘禁がすべて右全事実によるものと認められる場合の刑事補償請求の期間は、右全事実の関係で、上告審判決が確定した日から起算すべきである。 …
事件番号: 昭和61(ひ)1 / 裁判年月日: 昭和61年4月2日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】無罪の確定判決を受けた者が請求できる費用補償の額は、証人等の旅費、日当、宿泊料の支給基準を参酌し、かつ弁護人の報酬については事案の性質や弁護活動の状況等を考慮して算定される。 第1 事案の概要:刑事被告事件において無罪の判決を受け、これが確定した請求人が、国に対して刑事訴訟法188条の2に基づき費…
事件番号: 昭和53(し)58 / 裁判年月日: 昭和53年7月18日 / 結論: 棄却
再審請求手続において要した費用は、刑訴法一八八条の二による補償の対象とはならない。
事件番号: 昭和30(ひ)2 / 裁判年月日: 昭和30年12月26日 / 結論: その他
最高裁判所大法廷において判決を言い渡した被告事件に関する上訴費用補償請求については、最高裁判所小法廷も刑訴第三七〇号第一項にいう「当該上訴裁判所であつた最高裁判所」にあたる。