再審請求手続において要した費用は、刑訴法一八八条の二による補償の対象とはならない。
再審請求手続において要した費用と刑訴法一八八条の二による補償
刑訴法188条の2,刑訴法188条の6
判旨
無罪判決が確定した者に対する費用の補償の範囲は立法政策の問題であり、再審請求手続において要した費用は刑事訴訟法188条の2による補償の対象とはならない。
問題の所在(論点)
刑事訴訟法188条の2第1項にいう費用補償の対象に、再審請求手続において要した費用が含まれるか。
規範
刑事訴訟法188条の2第1項に基づく「無罪の判決が確定した」場合の費用補償の対象範囲は、原則として当該無罪判決に係る本案の被告事件の手続に要した費用に限られる。憲法40条の精神を受け、どの範囲の費用を補償するかは、立法府の合理的な裁量に委ねられた立法政策の問題である。
重要事実
抗告人は、刑事事件において無罪判決が確定した後、刑事訴訟法188条の2に基づき費用の補償を請求した。その際、本案の刑事手続だけでなく、その前段階として行われた「再審請求手続」において要した費用についても補償の対象に含めるべきであると主張して抗告した。
あてはめ
事件番号: 昭和58(し)39 / 裁判年月日: 昭和58年9月27日 / 結論: 棄却
刑訴法一八八条の二第一項は、費用の補償をすべき場合を無罪の判決が確定したときに限り、公訴棄却の判決が確定したときを含まない趣旨である。
憲法40条は刑事補償について規定するが、無罪判決確定者に対する具体的な費用補償の範囲を直接画定するものではなく、これは立法政策の合理的な判断に帰せられる。刑事訴訟法188条の2は、無罪判決を得るに至った直接の訴訟手続における負担を軽減することを目的とするものである。再審請求手続は、確定判決の妥当性を争う特殊な手続であり、同条が予定する通常の公判手続等とは性質を異にするため、当然に補償の対象に含まれるとは解されない。したがって、再審請求手続に要した費用は同条の補償対象外であるとした原判断は正当である。
結論
再審請求手続において要した費用は、刑事訴訟法188条の2による補償の対象とはならない。
実務上の射程
費用補償の範囲を限定的に解する判例であり、答案作成上は「立法政策の問題」であるというロジックを憲法・刑訴法の文脈で活用する。再審請求段階の弁護人費用や調査費用などは、現行法上、本条に基づく補償請求はできないという結論を導く際に引用すべきである。
事件番号: 昭和52(ひ)1 / 裁判年月日: 昭和52年6月20日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】無罪の判決が確定した被告人に対し、刑事訴訟法に基づき、裁判に要した費用の補償として、弁護士報酬等を含む所定の金額を交付すべきである。 第1 事案の概要:請求人は、窃盗被告事件(最高裁判所昭和48年(あ)第1158号)において被告人として起訴されたが、昭和52年3月17日に最高裁判所から無罪の判決を…
事件番号: 昭和54(し)118 / 裁判年月日: 昭和54年12月14日 / 結論: 棄却
刑訴法一八八条の二、一八八条の六により補償すべき費用のうち、被告人又は弁護人であつた者に対する旅費、日当、宿泊料については、これらの者が公判準備及び公判期日に出頭した時点を、また、弁護人であつた者に対する報酬については、当該各審級の判決宣告の時点を、それぞれ基準として算定すべきである。
事件番号: 昭和53(ひ)1 / 裁判年月日: 昭和53年7月18日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】無罪判決が確定した被告人に対し、刑事訴訟法に基づき、裁判に要した費用の補償を認めた事案である。 第1 事案の概要:請求人は、猥せつ図画所持被告事件(最高裁昭和51年(あ)第783号)の被告人であったが、昭和52年12月22日に最高裁判所において無罪の判決を言い渡され、昭和53年1月4日に同判決が確…