本件付審判請求事件の審理手続において裁判所が定めた審理方式のうち、請求人代理人に対し検察官から裁判所に送付された一件記録の閲覧謄写を許可する部分は、本件事案(判文参照)のもとでは、裁判所に許された裁量の範囲を逸脱し違法である。
付審判請求事件の審理手続において検察官から裁判所に送付された一件記録の閲覧謄写を許可することが違法とされた事例
刑訴法47条,刑訴法196条,刑訴法262条,刑訴法265条,刑訴規則171条
判旨
付審判請求手続における捜査記録等の閲覧謄写の許可は、密行性の解除による弊害に優越すべき特段の必要性がない限り、裁判所の裁量権を逸脱し違法となる。
問題の所在(論点)
付審判請求手続における裁判所の審理方式の決定に対し、特別抗告が許されるか。また、同手続において請求人代理人に捜査記録等の閲覧謄写を認めることの可否とその限界が問題となる。
規範
付審判請求手続は、公訴提起前の職権手続であり、対審構造を有しないため、裁判所は適切な裁量により審理方式を定め得る。しかし、捜査記録等の閲覧謄写を許可することは、関係者の名誉・プライバシー侵害や真実歪曲の危険性を伴う。したがって、かかる密行性の解除による弊害に優越すべき特段の必要性がない限り、閲覧謄写を許可する措置は裁量の範囲を逸脱し違法となる。
重要事実
付審判請求事件を受理した地裁が、審理方式として、請求人代理人に対し検察官送付の捜査記録等の一切につき、具体的・個別的吟味をすることなく無制限かつ全面的に閲覧謄写を許可する旨を定め、実際にその謄写が行われた。これに対し被疑者側が、当該許可の取り消しを求めて特別抗告を申し立てた。
事件番号: 昭和48(し)62 / 裁判年月日: 昭和49年3月13日 / 結論: 棄却
付審判請求事件の審理方式は、裁判所が当該事件について審理に関する方針を宣明するものにすぎず、これによつて直ちに一定の訴訟法上の効果を生ずるものではないのが一般であり、審理方式中関係人に告知することにより一定の訴訟法上の効果を生じさせるものを除き、審理方式自体に不服申立をすることは許されない。
あてはめ
本件では、請求人代理人が弁護士であり守秘義務が課されている等の事情はあるが、原裁判所は記録の内容を個別具体的に吟味することなく、一律かつ全面的に閲覧謄写を許可している。これは、捜査記録の公開によるプライバシー侵害や真実歪曲の弊害を上回る「特段の必要性」がある場合とは認められない。よって、本件の許可措置は裁判所に許された裁量の範囲を逸脱する重大な違法がある。また、本決定は判決前の決定に準ずるが、終局裁判による救済が期待しがたい以上、例外的に刑訴法433条の抗告が許される。
結論
本件審理方式のうち、閲覧謄写を許可した部分は裁量権を逸脱し違法である。この点に関する原決定を取り消す。
実務上の射程
付審判手続における記録閲覧の可否に関するリーディングケース。証拠開示の必要性と捜査の密行性・プライバシー保護の衡量を求めており、答案上は「特段の必要性」の有無を判断枠組みとして提示する際に活用する。
事件番号: 昭和56(し)80 / 裁判年月日: 昭和56年6月22日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】付審判請求事件の記録の一部に対する閲覧・謄写許可決定は、訴訟手続に関し判決前にした決定に準ずるものとして、刑事訴訟法433条に基づく特別抗告をすることは許されない。 第1 事案の概要:付審判請求事件において、原裁判所が請求人代理人の一人に対し、事件記録の一部(検察官作成の意見書別紙)を閲覧・謄写さ…
事件番号: 昭和42(し)17 / 裁判年月日: 昭和42年4月11日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】付審判請求書において、被疑者、犯罪事実、および適式な証拠の記載がない場合は、刑事訴訟法262条2項および刑事訴訟規則169条所定の方式に違反し不適法となる。 第1 事案の概要:抗告人は、地方裁判所に対し付審判請求を行ったが、提出された請求書には被疑者が誰であるかの特定がなく、具体的な犯罪事実も記載…
事件番号: 昭和56(し)77 / 裁判年月日: 昭和56年6月22日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】付審判請求事件の記録の一部を閲覧・謄写させる旨の決定は、訴訟手続に関し判決前にした決定に準ずるものとして、刑事訴訟法433条の特別抗告の対象とはならない。 第1 事案の概要:申立人らに対する付審判請求事件において、原裁判所は請求人代理人のうち1名に対し、事件記録の一部(検察官作成の意見書の別紙)を…
事件番号: 昭和47(し)50 / 裁判年月日: 昭和47年11月16日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】裁判官の忌避事由である「不公平な裁判をする虞れ」(刑訴法21条)は、審理方式に過剰な便宜供与等の行き過ぎた点があるとしても、そのことから直ちに肯定されるものではない。 第1 事案の概要:付審判請求事件において、裁判所は、弁護士でない請求人らに対しても記録の閲覧謄写を認め、証拠調べに際して請求人でな…