一 物品税法施行規則(昭和三五年政令第二二五号による改正前のもの)第一一条ノ六は、物品税法(昭和三七年法律第四八号による改正前のもの)第三条第三項の委任の範囲を逸脱したものとは認められない。 二 物品税法施行規則(右改正前のもの)第一条は、物品税法(右改正前のもの)第一条第一項の委任に基づき同条項で列挙している物品を、更に限定してその範囲を明確にしたものであつて、同条項は、物品税の課税上国民生活に重要な影響ある事項を法律をもつて規定せず命令に委任しているものではない。 三 物品税法(昭和三七年法律第四八号による改正前のもの)第三条第一項の「製造場ヨリ移出スル時ノ物品ノ価格」とは通常の取引形態および取引事情における価格、従つて適正な市場価格または取引価格でなければならないことは当裁判所の判例の趣旨とするところである(昭和二六年(れ)第二三三四号同三一年五月一〇日第一小法廷判決、刑集一〇巻五号六四九頁参照)。
一 物品税法(昭和三七年法律第四八号による改正前のもの)第三条第三項の委任の範囲と同法施行規則(昭和三五年政令第二二五号による改正前のもの)第一一条ノ六。 二 物品税法(右改正前のもの)第一条第一項と同法施行規則(右改正前のもの)第一条との関係。 三 物品税法(昭和三七年法律第四八号による改正前のもの)第三条第一項にいう「製造場ヨリ移出スル時ノ物品ノ価格」の法意。
物品税法(昭和37年法律48号による改正前のもの)1条1項,物品税法(昭和37年法律48号による改正前のもの)3条3項,物品税法(昭和37年法律48号による改正前のもの)3条1項,物品税法施行規則(昭和35年政令225号による改正前のもの)1条1項,物品税法施行規則(昭和35年政令225号による改正前のもの)11条ノ6,憲法30条,憲法84条
判旨
物品税法に基づく課税標準価格の算出において、運送賃を課税価格から除外するための手続を規定した施行規則は、法の委任の範囲内であり租税法律主義に反しない。また、課税物件の具体的範囲を命令に委任することも、法律で基本的事項が規定されている限り憲法84条に違反しない。
問題の所在(論点)
1. 運送賃を課税価格から除外するために特定の事務手続を求める施行規則の規定は、法律の委任を逸脱し憲法84条に違反するか。 2. 課税物件の具体的範囲を命令(施行規則)に委任する物品税法の規定は、租税法律主義に違反するか。
規範
1. 課税標準としての「物品の価格」とは、通常の取引形態および取引事情における適正な市場価格または取引価格を指す。 2. 租税法律主義(憲法84条)との関係では、法律が課税物件、税率、納税義務者等の基本的事項を具体的に規定している限り、その細目や範囲の明確化を命令に委任することは許容される。 3. 委任命令が、課税の公平を図る目的で合理的な手続要件を課すことは、母法の法意に副うものとして有効である。
重要事実
被告人会社は、オルガンを卸売価格相当の2万4千円で移出した。これに対し税務当局は、当該価格を基準に課税価格を算出した。被告人側は、(1)実際の移出価格には運賃等が含まれているが、物品税法施行規則が定める明細書の提出手続を行わなかったために運賃分まで課税されたのは租税法律主義に反すること、(2)物品税法1条1項が課税範囲を命令に委任している点は違憲であること、を主張して上告した。
あてはめ
1. 物品税法3条3項は価格に関し必要な事項を命令に委任しており、施行規則はこれに基づく。運送賃が対価と区分されていない場合、その額を客観的に判定するために明細書の提出を求めることは、課税の公平を期する上で妥当な手続であり、母法の法意を逸脱しない。 2. 物品税法自体が、1条で課税物件(各種物品)を列挙し、2条で税率、3条で課税標準、4条で納税義務者等の基本的事項を自ら規定している。施行規則は法律が列挙した物品を限定・明確化しているに過ぎず、白紙委任には当たらない。
結論
本件各規定は憲法84条、30条に違反せず、本件課税は法律に基づきなされた適法なものである。
実務上の射程
租税法律主義における「委任の限界」に関する重要判例である。法律で課税の根拠と基本要素が示されていれば、執行の適正を確保するための事務的手続や、対象の技術的な細分化を命令に委任することは広く認められる。答案では、委任の必要性と母法の規定の具体性を相関的に論じる際に引用すべきである。
事件番号: 昭和30(あ)3777 / 裁判年月日: 昭和33年7月15日 / 結論: 棄却
物品税法にいう移出とは、課税物品を製造場から他の場所に移動させる事実行為をいうのであり、売買、贈与等の法律行為を伴う場合に限られないものと解するを相当とする。