刑法第二四七条にいわゆる「財産上ノ損害ヲ加ヘタルトキ」とは、財産上の実害を発生させた場合のみでなく、実害発生の危険を生じさせた場合をも包含する。
刑法第二四七条にいわゆる「財産上ノ損害ヲ加ヘタルトキ」の意義。
刑法247条
判旨
背任罪(刑法247条)における「財産上の損害」には、既存の財産が減少するなどの実害が発生した場合のみならず、実害発生の危険を生じさせた場合も含まれる。
問題の所在(論点)
背任罪の成立要件である「財産上の損害」(刑法247条)の意義。特に、現実の財産減少という「実害」の発生が必要か、あるいは実害発生の「危険」で足りるか。
規範
刑法247条にいう「財産上の損害を加えたとき」とは、財産上の実害を発生させた場合のみならず、実害発生の危険を生じさせた場合をも包含するものと解するのが相当である。
重要事実
被告人Aらは、その任務に背く行為(任務違背行為)に及んだ。その結果、被害者に対して財産上の実害が確定的に発生するまでには至っていないものの、経済的な観点から見て実害が発生する客観的な危険が生じる状態をもたらした(詳細な具体的態様は判決文からは不明)。
あてはめ
被告人の行為が「任務に背いた行為」に該当することを前提とした上で、その行為によって財産上の実害そのものが未だ現実化していなかったとしても、実害が発生する具体的な危険が生じているのであれば、同条の「財産上の損害」の要件を充足するといえる。本件においても、実害発生の危険が生じている以上、損害の発生が認められる。
結論
被告人の行為により財産上の実害発生の危険が生じたことをもって「財産上の損害」を認め、背任罪の成立を肯定した原判断は正当である。
実務上の射程
本判決は背任罪における損害概念について「リスク(危険)の発生」で足りるとする、いわゆる経済的財産説に近い立場を明確にしたものである。答案上では、焦げ付き融資や無担保融資などの事案において、回収不能の具体的危険が生じた時点で背任罪の既遂を導く際の根拠として活用する。
事件番号: 昭和25(れ)384 / 裁判年月日: 昭和28年2月13日 / 結論: その他
食糧営団の役員が国庫に納付すべき利益金をその任務に背いて営団職員の生活資金として交付したからといつて、右出捐が営団として当然なすべき出捐である場合には、営団に損害を与えたものと速断することはできない。