食糧営団の役員が国庫に納付すべき利益金をその任務に背いて営団職員の生活資金として交付したからといつて、右出捐が営団として当然なすべき出捐である場合には、営団に損害を与えたものと速断することはできない。
背任罪における財産上の損害の有無
刑法247条
判旨
背任罪の成立には「財産上の損害」が必要であり、法人が支出を免れない債務の履行として金員を交付した場合は、直ちに損害の発生を認めることはできない。また、特定の使途(国庫納付等)に充てるべき資金を他へ流用したとしても、それが直ちに当該法人への損害を構成するわけではなく、損害との因果関係を慎重に判断すべきである。
問題の所在(論点)
法人が負担すべき義務(職員への生活資金・賞与の支払)のために資金を支出した場合において、背任罪における「財産上の損害」が認められるか。また、特定目的(国庫納付)のための資金を流用したことが直ちに当該法人の損害といえるか。
規範
刑法247条の「財産上の損害」とは、本人の財産状態を全体として観察し、任務違背行為によって現実に財産の減少または将来得べかりし利益の喪失を招くことをいう。したがって、行為の結果として本人が負担すべき既存の法的義務や当然なすべき出捐を履行したに過ぎない場合は、原則として財産上の損害には当たらない。
重要事実
被告人Aら5名は、食糧営団が国庫に納入すべき利益金(約245万円)を保管していたが、これを営団職員の生活資金(年末賞与的性質)として支給する目的で払い戻し、各職員に交付した。原審は、国庫に納入すべき金を流用して職員に交付し、営団に同額の損害を与えたとして背任罪の成立を認めたため、被告人らが上告した。
あてはめ
本件における職員への生活資金の交付が、実質的に年末賞与の性質を有し、営団として当然に支出すべき費用(義務的支出)であったならば、その支出は営団にとって当然なすべき出捐であり、直ちに「財産上の損害」があったとは断定できない。また、国庫に納付すべき利益金を他へ流用したことが国庫に対する損害となる可能性はあるが、それによって「営団」に同額の損害が生じたとするには、流用行為と営団の財産減少との間の因果関係が具体的に審理・確定されなければならない。
結論
被告人らの行為が営団にとって当然の債務履行であれば損害は否定され、また流用のみをもって直ちに営団への損害と解することもできないため、背任罪の成立を認めた原判決には審理不尽・理由不備の違法がある。
実務上の射程
背任罪の「損害」の有無を判断する際、本人が負っている対外的な債務の履行としてなされたか、あるいは法的に免れない支出であったかを検討すべきとする射程を持つ。また、流用事例において「誰に」損害が生じたかの認定を厳格に求める実務上の指針となる。
事件番号: 昭和31(あ)1761 / 裁判年月日: 昭和34年2月13日 / 結論: その他
一 控訴審が事実の取調をなし第一審の無罪判決を破棄して有罪を認定するにあたつては、第一審において取り調べた証拠は、控訴審で再び証拠調をし直すことを必要とせず、そのまま証拠能力を認めて判決の基礎とすることができる。 二 社団法人たる森林組合を代表し組合業務一切を掌理する組合長および組合長を補佐し組合業務を執行する組合常務…