公共企業体等労働関係法第一七条に違反してなされた争議行為に対しては、労働組合法第一条第二項の適用はない。
公共企業体等労働関係法第一七条違反の争議行為と労働組合法第一条第二項。
公共企業体等労働関係法17条,労働組合法1条2項,刑法130条,刑法35条
判旨
公共企業体等の職員は公労法17条1項により争議行為を全面的に禁止されており、その争議権自体が否定されているため、当該争議行為に労働組合法1条2項の刑事免責を適用する余地はない。
問題の所在(論点)
公共企業体等労働関係法17条1項により争議行為を禁止されている職員が行った争議行為に対し、労働組合法1条2項(刑事免責)の適用があるか。
規範
公共企業体等の企業の重要性から、その職員が争議行為の制限を受けても憲法28条に違反しない。争議権自体が否定されている以上、その行為の正当性の限界を論ずる余地はなく、労働組合法1条2項による刑事免責は適用されない。
重要事実
被告人らは、当時の公共企業体等労働関係法(公労法)が適用される職員でありながら、同法17条1項で禁止されている争議行為(同盟罷業等)を行った。原審は、当該争議行為に労働組合法1条2項の適用がある(刑事免責の可能性がある)とした上で、本件は正当性の限界を超えるとして刑法130条の建造物侵入罪の成立を認めた。検察官は、公労法違反の行為に労組法1条2項の適用があるとした判断を誤りとして上告した。
事件番号: 昭和43(あ)1462 / 裁判年月日: 昭和45年7月16日 / 結論: 棄却
一 国鉄連絡船の乗務船員でない国鉄労働組合員が同船に乗り込んだことが、同組合の団体行動として同船の航行中に勤務当直者でない乗務船員たる組合員らに対するオルグ活動をするためであるとしても、船長が退去を命令したときは、これに従うことを要し、これに従わないで船内に滞留することは、労働組合法一条二項にいう正当な行為とはいえず、…
あてはめ
公労法17条1項は、公共企業体等の職員に対し、業務の正常な運営を阻害する一切の行為を禁止している。国家経済および国民福祉における当該企業の重要性に鑑みれば、この禁止規定は合憲である。刑事免責の根拠となる労組法1条2項は、正当な争議行為を前提とするものであるが、法律により争議権自体が否定されている職員の行為については、その正当性の限界を判断する前提を欠くため、同条の適用は排斥される。したがって、原判決が労組法1条2項の適用を肯定した点は解釈の誤りである。
結論
公労法違反の争議行為に労働組合法1条2項の適用はない。ただし、本件では結論として有罪が維持されており、判決に影響を及ぼさないため上告棄却。
実務上の射程
労働基本権の制限と刑事免責の関係を示す。全農林警職法事件判決等の後の判例により、公務員等の争議行為禁止は「憲法尊重擁護義務」や「全体の奉仕者性」から正当化される法理へと展開するが、刑事免責を否定する基本的な論理構造として参照される。答案上は、公務員等の争議行為が刑罰事由に該当する場合、労組法の免責規定が直接適用されない理由として、法律による禁止の合憲性と関連付けて論じる際に用いる。
事件番号: 昭和40(あ)2067 / 裁判年月日: 昭和41年6月2日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】争議行為としての適法性の限界を超えた違法な行為については、憲法28条による保障の対象外となり、刑事上の罪責を免れない。 第1 事案の概要:被告人らの行動が争議行為の一環として行われたが、その具体的な態様が問題となった事案。原審は、被告人らの行動をもって適法性の限界を超えた違法行為と判断し、有罪判決…
事件番号: 昭和46(あ)1257 / 裁判年月日: 昭和50年4月30日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】公共企業体等労働関係法17条1項に違反する争議行為であっても、直ちに正当性が否定されるわけではなく、労働組合法1条2項の刑事免責の適用があり得る。ただし、組織統制力の行使として許容される限界を超える有形力の行使を伴う場合は、違法不当なものとして刑事免責の対象とならない。 第1 事案の概要:郵政職員…
事件番号: 昭和51(あ)947 / 裁判年月日: 昭和53年6月2日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】公共企業体等労働関係法17条1項による争議行為の禁止規定は、憲法28条に違反しない。公務員や公共企業体職員の労働基本権に対する制限は、公共の福祉による合理的な制約として認められる。 第1 事案の概要:日本国有鉄道(当時)の職員であった被告人らが、争議行為(ストライキ等)を主導・実行した。これに対し…
事件番号: 昭和41(あ)1510 / 裁判年月日: 昭和43年3月7日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】公共企業体等労働関係法17条1項に違反してなされた争議行為であっても、労働組合法1条2項の適用は排除されないが、暴力の行使を伴う行為は正当性の限界を越えるため刑事免責の対象とならない。 第1 事案の概要:被告人らは、公共企業体等労働関係法17条1項の規定に違反して争議行為を行った。その際、被告人ら…