刑法第二五条第二項但書は、憲法第三九条後段、第一四条第一項に違反しない。
刑法第二五条第二項但書と憲法第三九条後段、第一四条第一項。
刑法25条1項,刑法2項,憲法39条,憲法14条1項
判旨
刑法25条2項但書は、保護観察中の再犯に対して再度の執行猶予を認めないとする規定であるが、これは前犯について重ねて刑罰を科すものではなく、また合理的根拠に基づく差別であるため、憲法39条後段および14条1項に違反しない。
問題の所在(論点)
刑法25条2項但書が、保護観察中の再犯者に対して一律に再度の執行猶予を認めないとしている点が、憲法39条後段の二重処罰禁止および憲法14条1項の平等原則に抵触するか。
規範
刑の執行猶予制度において、特定の要件を満たす者に限定して再度の猶予を認めない規定を設けることは、前犯に対する確定判決を変更し、あるいは二重に処罰するものではない(憲法39条後段適合性)。また、更生の見込みや情状の有無に基づき、刑の適正な適用の基準として差異を設けることは、一般社会観念上合理的な根拠がある限り、平等の原則に反しない(憲法14条1項適合性)。
重要事実
被告人は、懲役または禁錮の執行を猶予され、かつその期間中に保護観察に付されていた。しかし、被告人はその猶予期間内にさらに罪を犯した。これに対し、刑法25条2項但書が適用され、再度の執行猶予が得られないことについて、被告人側は同条項が憲法39条後段(一事不再理・二重処罰の禁止)および憲法14条1項(法の下の平等)に違反し無効であると主張して上告した。
あてはめ
憲法39条後段との関係では、本条項は保護観察期間中の再犯について新たな刑罰の執行猶予を制限するにとどまり、前犯の確定判決を覆したり、前犯について再度処罰したりするものではないといえる。また、憲法14条1項との関係では、保護観察付執行猶予中に再犯を犯した者について「再度の執行猶予を相当とする情状がない」と判断し、同項本文の該当者(保護観察なしの猶予者等)と区別することは、刑の適正な適用の基準を定めたものとして合理的な根拠がある。したがって、当該区別は不当な差別には当たらないと解される。
結論
刑法25条2項但書は、憲法39条後段および憲法14条1項に違反しない。本件上告は棄却される。
実務上の射程
執行猶予の欠格事由に関する憲法判断のリーディングケースである。答案上は、二重処罰の意義(既判力や二重の評価の禁止)や、法の下の平等における「合理的区別」の具体例として、刑法の政策的裁量を肯定する文脈で使用できる。
事件番号: 昭和46(あ)738 / 裁判年月日: 昭和46年5月31日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑法25条1項2号が、前に禁錮以上の刑に処せられたことを執行猶予の欠格事由としている点は、二重処罰を禁じる憲法39条後段に違反しない。当該規定は執行猶予の要件を定めたものに過ぎず、過去の犯罪について重ねて責任を問い、処罰する趣旨ではないからである。 第1 事案の概要:被告人は、過去に禁錮以上の刑に…
事件番号: 昭和34(あ)2063 / 裁判年月日: 昭和37年4月6日 / 結論: 棄却
火薬類取締法五九条二号、二一条の各規定は、憲法二九条に違反しない。
事件番号: 昭和42(あ)2625 / 裁判年月日: 昭和43年3月28日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】前科を量刑上の判断材料として参酌することは、同一の犯罪事実について重ねて刑事上の責任を問うものではないため、憲法39条後段の二重処罰の禁止には違反しない。 第1 事案の概要:被告人が刑事事件において有罪判決を受けた際、裁判所が被告人の前科を量刑上の情状として参酌した。これに対し、弁護人は、判決謄本…
事件番号: 昭和54(あ)267 / 裁判年月日: 昭和54年6月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑法25条1項2号が、前科のある者に対して執行猶予の要件を厳格に定めていることは、憲法14条の法の下の平等及び39条の一事不再理・二重処罰の禁止に違反しない。 第1 事案の概要:上告人は、刑法25条1項2号の規定(前に禁錮以上の刑に処せられたことがあっても、その執行を終わった日等から5年以内に禁錮…