一 酒税法第六二条のいわゆる両罰規定における事業主たる法人又は人に対する公訴時効は、その法人又は人に対する法定刑たる罰金刑につき定められた三年の期間を経過することによつて完成する。 二 第一審における証拠とすることの同意を控訴審に至つて撤回することは、原則として許されない。
一 酒税法第六二条のいわゆる両罰規定における事業主たる法人又は人に対する公訴時効 二 第一審における証拠とすることの同意を控訴審に至つて撤回することの可否
酒税法62条,酒税法55条1項1号,刑訴法250条5号,刑訴法253条,刑訴法411条1号,刑訴法326条
判旨
両罰規定により法人が負う刑事責任は、行為者の責任とは別個独立の責任であり、法人の公訴時効は当該違反行為の終了時から進行する。
問題の所在(論点)
両罰規定に基づき法人が刑事責任を負う場合において、法人に対する公訴時効の期間および起算点はどのように解すべきか。法人の責任を行為者の責任と連動させるべきか、あるいは独立の責任として判断すべきかが問題となる。
規範
両罰規定は、事業主たる法人を、代表者等の行為者とは別個の刑事責任の主体とするものである。したがって、法人に対する公訴時効の期間は、罰則規定のうち罰金刑に関する部分を基準として刑訴法250条各号を適用し、その起算点は、刑訴法253条1項により当該違反行為が終了した時とする。
重要事実
被告会社および被告人Aは、酒税法違反の行為(脱税等)に及んだ。第一審判決は、被告人Aの行為につき被告会社に対しても酒税法62条の両罰規定を適用し、罰金刑に処した。しかし、本件の起訴状が提出されたのは昭和33年5月31日であったが、対象となる違反行為は昭和28年から29年中に終了していた。酒税法55条1項1号の罰金刑に対する公訴時効期間は3年(刑訴法250条5号)であった。
あてはめ
酒税法の両罰規定によれば、法人は行為者の責任とは別個の刑事責任を負う。本件における酒税法違反行為に対する罰金刑の時効期間は3年である。事実によれば、本件行為は昭和29年までに終了しているため、その時から3年が経過した時点(昭和32年中)で被告会社に対する公訴時効は完成している。本件起訴は昭和33年になされており、時効完成後の公訴提起といえる。
結論
被告会社に対する公訴時効は完成しており、免訴を言い渡すべきである。第一審および原判決が被告会社の刑事責任を認めた点は違法であり、破棄を免れない。
実務上の射程
法人と行為者の処罰をめぐる「独立責任説」を前提とする。答案上では、行為者の公訴時効が停止・中断している場合でも、法人については別途時効が完成し得る点に注意が必要である。法人に対する求刑や公訴提起の可否を検討する際の基礎となる判断枠組みである。
事件番号: 昭和33(あ)559 / 裁判年月日: 昭和37年3月6日 / 結論: 破棄差戻
物品税法第二二条にいわゆる両罰規定における事業主たる法人に対する公訴時効は、刑訴第二五〇条第五号により時効期間はその法人に対する法定刑たる罰金刑につき定められた三年であり、その起算点は同法第二五三条第一項により右物品税法第一八条第一項の違反行為が終つた時と解するのを正当とする。