被告人が法令に定められた運転の資格を持たないで、昭和三〇年五月一九日午後一時頃玉名市aよりA号自動三輪車を運転して、玉名市b町内を乗り廻して無謀操縦をしたという公訴事実と、同一被告人が法令に定められた運転の資格を持たないで、昭和三〇年五月一九日午後一時四〇分頃玉名市c町道路においてB家所有の自動三輪車を運転して無謀操縦をしたという公訴事実とは、その各運転行為が同一自動三輪車の一連の無謀操縦行為と認められる以上は、両公訴事実は包括一罪の関係にあるものというべきである。
包括一罪と認められる一事例
刑訴法337条,刑訴法338条,刑訴法454条
判旨
先行の有罪確定判決がある事由と、後の略式命令に係る事実が、一連の無謀操縦という一個の行為として一罪の関係にある場合には、後の略式命令は確定判決を経た犯罪につき重ねて裁判をしたことになり、免訴すべきものとなる。
問題の所在(論点)
先行する有罪確定判決がある場合に、それと密接に関連する後の公訴事実について、刑訴法337条1号(確定判決を経たとき)の免訴事由が認められるか。特に、外形上別個の事実として起訴された複数の行為が「一罪の関係」にあるかどうかの判断基準が問題となる。
規範
既に有罪の確定判決が存する場合、その判決の既判力は当該判決と「一罪の関係」にあるすべての犯罪事実に及ぶ。したがって、二つの公訴事実が日時・場所等の表現において一見別個の事実に見える場合であっても、実態として一連の行為による一個の犯罪を構成する(一罪の関係にある)ときは、後の公訴事実は刑訴法337条1号に該当し、免訴の対象となる。
重要事実
被告人は、昭和30年5月19日午後1時頃、無免許かつ飲酒状態で自動三輪車を運転し、玉名市内で一連の無謀操縦を行った。この行為について、まず玉名簡易裁判所で道路交通取締法違反の有罪判決(確定)を受けた。その後、同じ日のほぼ同時刻における一連の運転行為のうち、別の地点での無謀操縦について、熊本簡易裁判所が新たに略式命令を発し、これも確定した。しかし、記録によれば、これら二つの事実は、同一車両により玉名市aからc町まで継続して乗り回し、その途中で事故を起こしつつも停車するまでの「一連の無謀な操縦をした行為」であった。
事件番号: 昭和31(さ)6 / 裁判年月日: 昭和31年11月27日 / 結論: 破棄自判
さきに起訴略式命令のあつた犯罪事実と同一の犯罪事実につき同一簡易裁判所にさらに起訴略式命令の請求があつた場合、後の起訴に対しては刑訴三三八条三号に則り判決を以て公訴棄却をなすべきであるがそのことなく略式命令をなした場合、さきの略式命令の送達が遅れたため後になれた略式命令が先に送達され確定したとしても後の起訴に対する略式…
あてはめ
本件における二つの公訴事実は、日時、場所、表現の細部において相違がある。しかし、被告人が同一の自動三輪車を借受け、無免許かつ飲酒状態で一箇所から出発し、市街地を乗り回して事故を起こし、最終的に停車するまでの一連の過程を捉えたものである。これを仔細に検討すれば、二つの事実は独立した別個の犯罪ではなく、一連の無謀操縦という「一罪の関係」にあると認められる。そうであれば、先行の玉名簡裁の確定判決の効力は、本件略式命令の対象となった事実にも及ぶものと評価される。
結論
熊本簡易裁判所の略式命令は、既に確定判決を経た犯罪事実につき重ねて裁判をした違法がある。よって、刑訴法458条1号により当該略式命令を破棄し、同法337条1号に基づき免訴とする。
実務上の射程
既判力の客観的範囲(「公訴事実の同一性」)が問題となる場面で、数個の事実が一罪の関係(単純一罪等)にあることを理由に免訴を導く際の先例となる。実務上は、連続した運転行為を分割して起訴・処罰することの可否を判断する際の指標となる。
事件番号: 昭和41(さ)2 / 裁判年月日: 昭和41年5月27日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】既に確定した略式命令と同一の公訴事実について重ねて公訴が提起された場合、裁判所は刑訴法337条1号に基づき、判決で免訴を言い渡さなければならない。 第1 事案の概要:被告人は、昭和38年11月15日の無免許運転の事実について、同年12月5日に罰金6000円の略式命令が確定した。しかし、その後、検察…
事件番号: 昭和31(さ)5 / 裁判年月日: 昭和31年11月30日 / 結論: 破棄自判
さきに起訴略式命令のあつた犯罪事実と同一の犯罪事実につき、同一簡易裁判所に他の犯罪事実と共にさらに起訴略式命令の請求があつた場合に、その簡易裁判所が右二重起訴の部分について刑訴第三三八条第三号により公訴を棄却することなく、略式命令により他の犯罪事実と併合罪として処断し、さきの略式命令確定後右略式命令が確定したときは、後…
事件番号: 昭和41(さ)1 / 裁判年月日: 昭和41年4月28日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】既に確定した裁判と同一の犯罪事実について、重ねて公訴が提起され、これに基づき略式命令が発せられた場合、当該後の裁判は刑事訴訟法337条1号に違反する。このような二重の確定裁判が生じた事態は、被告人の不利益が明らかであるため、非常上告の手続により原判決を破棄し、免訴を言い渡すべきである。 第1 事案…