勾留せられた被疑者が留置の必要事由消滅により処分留保のまま釈放された以上同人に対する勾留状の効力を争うことは利益がない。
勾留状の失効とその勾留の効力を争う抗告の利益
刑訴法207条,刑訴法208条,刑訴法60条,刑訴法429条,刑訴法433条
判旨
勾留の必要事由消滅等により被疑者が釈放され、勾留状が既に失効している場合、その勾留状の効力を争う不服申立ての利益は失われる。
問題の所在(論点)
被疑者が釈放され、勾留状が既に失効している場合において、当該勾留状の効力を争う特別抗告の利益が認められるか。
規範
不服申立ての対象である裁判等の効力が、事情の変更(釈放や期間満了等)により既に失われている場合には、特段の事情がない限り、当該効力を争う法律上の利益(訴えの利益)は消滅する。
重要事実
被疑者に対し、昭和30年5月12日に勾留状が発付された。しかし、その後、同年5月21日に留置の必要事由が消滅したとして、被疑者は処分留保のまま釈放された。これにより、当該勾留状は同日をもって失効した。
あてはめ
事件番号: 昭和44(し)20 / 裁判年月日: 昭和44年4月10日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】勾留状により勾留されていた被疑者が釈放された場合には、勾留の取消し等を求める不服申立ての利益が消滅するため、裁判所は原決定を取り消す実益がないものとして抗告を棄却すべきである。 第1 事案の概要:申立人は、昭和44年1月27日に簡易裁判所の裁判官が発した勾留状に基づき勾留されていた。しかし、その後…
本件において、被疑者は既に釈放されており、不服申立ての対象となっている勾留状は既に失効していることが明らかである。勾留という身体拘束の適法性を争う手続において、既にその拘束の根拠となる処分の効力が失われている以上、もはや本件手続においてその効力を争う実益はないといえる。
結論
勾留状の効力を争うことは、もはや本件手続においてはその利益がなくなったものというべきであり、特別抗告は棄却される。
実務上の射程
身体拘束に関する不服申立て(準抗告・特別抗告等)全般に及ぶ。釈放後の名誉回復や賠償請求のための違法確認を求める利益は、特段の規定がない限り、刑事不服申立手続の中では認められないとする実務を支える射程を持つ。
事件番号: 昭和33(し)64 / 裁判年月日: 昭和33年9月29日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】勾留状の失効により、裁判の効力を争う実益が失われた場合には、上訴の利益が認められず、特別抗告を棄却すべきである。 第1 事案の概要:被疑者らは、昭和33年8月26日に発せられた勾留状に基づき勾留されていた。しかし、同年9月2日に被疑者らが釈放されたことで、当該勾留状は失効した。この状況下で、申立人…
事件番号: 昭和42(し)1 / 裁判年月日: 昭和42年5月19日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】勾留に対する準抗告を棄却した決定に対し特別抗告がなされた場合であっても、被疑者が釈放されたときは、当該抗告について裁判をする実益がない。 第1 事案の概要:被疑者は銃砲刀剣類所持等取締法違反等の容疑で勾留され、これに対する準抗告が棄却されたため、弁護人が特別抗告を申し立てた。しかし、当該特別抗告の…
事件番号: 昭和46(し)62 / 裁判年月日: 昭和46年9月30日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】少年に対する検察官送致決定の取消しを求める抗告手続において、少年が既に釈放されている場合には、手続上の違法を争う利益は失われる。 第1 事案の概要:少年(申立人)に対し、家庭裁判所の裁判官が犯罪事実についての陳述の機会を与えないまま検察官送致(逆送)の決定を行った。申立人は、この手続が憲法に違反す…
事件番号: 昭和32(し)23 / 裁判年月日: 昭和32年5月21日 / 結論: 棄却
勾留せられた被疑者が留置の必要事由消滅により釈放された以上、同人に対する勾留状の効力を争うことは利益がない。