使用済の印紙であつても財物であつて盗罪の目的となる。
使用済の印紙と財物
刑法235条
判旨
使用済みの印紙であっても、他人が占有する「財物」に該当し、窃盗罪の客体となり得る。また、根拠法が廃止された印紙であっても、他の法律により代用が認められ有効に存続している限り、印紙犯罪処罰法の適用対象となる。
問題の所在(論点)
1. 使用済みの印紙が、刑法235条の窃盗罪における「財物」に該当するか。 2. 根拠法たる取引高税法が廃止された後の「取引高税印紙」が、印紙犯罪処罰法の適用対象である「印紙」に該当するか。
規範
刑法上の「財物」とは、必ずしも経済的価値や交換価値を有することを要せず、主観的価値や再利用の可能性等により、他人の占有を保護すべき利益があるものはすべてこれに含まれる。また、特別法における「印紙」の該当性は、当該印紙を規定した法律が廃止された後であっても、他の法令の規定により租税の納付等に有効に使用し得る状態にある限り、肯定される。
重要事実
被告人らは、他人が所持していた使用済みの印紙等を窃取した。また、被告人Dは、既に廃止された取引高税法に基づく「取引高税印紙」を所持等しており、これが印紙犯罪処罰法の「印紙」に該当するか、及び使用済みの印紙が窃盗罪の客体(財物)となるかが争点となった。
事件番号: 昭和30(あ)2858 / 裁判年月日: 昭和33年3月25日 / 結論: 棄却
一 取引高税印紙は印紙犯罪処罰法第二条にいう「印紙」にあたる。 二 印紙犯罪処罰法第二条第一項前段にいう偽造、変造等にかかる印紙の「使用」とは、必ずしも、納税の用に供するため印紙本来の用法に従つてこれを使用する場合に限らず、これを債務の担保に供し、または金融のため譲渡する等広く真正の印紙としての効用を発揮させるため情を…
あてはめ
1. 使用済みの印紙であっても、それが他人の占有下にある以上、財物性を肯定した大審院以来の判例を変更する必要はない。したがって、窃盗罪の目的となり得る。 2. 取引高税印紙については、取引高税法自体は廃止されているものの、「印紙をもつてする歳入金納付に関する法律」附則2項において、当分の間、収入印紙に代えて歳入金の納付に使用できると定められている。この規定は同法廃止後も有効に存続しており、当該印紙は今なお有効なものとして取り扱われている。したがって、依然として印紙犯罪処罰法にいう「印紙」に該当する。
結論
1. 使用済みの印紙は「財物」に該当し、窃盗罪が成立する。 2. 取引高税法廃止後も、取引高税印紙は印紙犯罪処罰法上の「印紙」に該当する。本件上告はいずれも棄却される。
実務上の射程
財物性の定義において「経済的価値の有無を問わない」とする文脈で引用可能。特に、無効化された証書や消印済みの切手・印紙であっても、所持者に何らかの利益(収集価値や還付請求権、悪用防止の利益等)がある限り、財物性を広く認める実務の根拠となる。
事件番号: 昭和29(あ)1523 / 裁判年月日: 昭和30年2月3日 / 結論: 棄却
印紙犯罪処罰法制定後、その施行中に政府が新たに発行した取引高税印紙は、同法にいわゆる印紙に該当する。