支払呈示期間後に窃取された線引小切手と雖も賍物といい得る。
支払呈示期間後に窃取された線引小切手は賍物といい得るか
刑法256条
判旨
刑法上の財物とは、経済的価値の有無を問わず、所有権の目的となり得るものであれば足り、価値を喪失したと思われる小切手であっても純然たる反古(ごみ)でない限り財物性を有する。
問題の所在(論点)
経済的価値が失われたように見える小切手が、刑法上の「財物」に該当するか。特に、所有権の目的となり得るかどうかの判断基準が問題となる。
規範
刑法上の「財物」(刑法235条等)とは、必ずしも経済的な交換価値を有することを要せず、所有権の目的となり得る独立の管理可能性を持つ物であれば足りる。主観的な価値や証拠としての価値、再利用の可能性等が認められる限り、直ちに無価値なものとして財物性を否定することはできない。
重要事実
被告人は、他人の占有する小切手を奪取等したとして窃盗罪等に問われた。弁護側は、当該小切手は既に価値を失っており、所有権の目的となり得ない「反古(ほご)」にすぎないため、刑法上の財物には当たらないと主張して上告した。
あてはめ
本件小切手について検討するに、たとえその券面額面通りの支払いが期待できない状態であったとしても、直ちに純然たる反古(ごみ)と同視することはできない。当該小切手は依然として物理的な形態を維持しており、占有者のもとで保管され、権利関係の証左や事実上の利得の手段となり得る。したがって、排他的な支配が可能な物として、所有権の目的となり得る財物であると認められる。
結論
本件小切手は「財物」に該当する。したがって、窃盗罪等の客体となり得る。
実務上の射程
財物概念を物理的・経済的価値に限定せず、所有権の客体としての適格性を重視する判例である。答案上は、廃紙や無価値に見える書面(期限切れの定期券、使用済みの切手等)の奪取が問題となる場面で、本判決の「所有権の目的となり得る」という基準を引用し、利用価値や主観的価値を根拠に財物性を肯定する際に活用できる。
事件番号: 昭和24(れ)2861 / 裁判年月日: 昭和27年12月4日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】賍物罪の成立において、被告人が当該物件が盗品等であること(賍物たるの情)を認識していたか否かは、原判決が挙げた諸証拠を総合して肯認できる場合、事実誤認の主張は上告理由にならない。 第1 事案の概要:被告人が賍物(盗品等)を譲り受けた等として起訴された事案において、被告人は、当該物件が賍物であるとの…
事件番号: 昭和30(あ)553 / 裁判年月日: 昭和30年8月9日 / 結論: 棄却
使用済の印紙であつても財物であつて盗罪の目的となる。