長野県風俗営業取締法施行条例第一八条第一号において、遊技場の営乗者または従業者が賭博に類似する行為、その他著しく射倖心をそそるような行為をしまたはさせてはならない旨を定めたのは、右取締法第三条所定の範囲を逸脱したものということはできない。
長野県風俗営業取締法施行条例第一八条第一号と風俗営業取締法第三条所定の制限事項の範囲
風俗営条取締法3条,長野県風俗営業取締法施行条例18条
判旨
風俗営業取締法3条に基づく都道府県条例の制限範囲は、営業場所や設備に限られず、善良の風俗を害する行為を防止するために必要な制限全般を含む。したがって、遊技場における賭博類似行為等の禁止を定めた条例は、同法の委任の範囲内として有効である。
問題の所在(論点)
風俗営業取締法3条の規定に基づき、条例が営業の内容(賭博類似行為の禁止等)に踏み込んだ制限を課すことは、法律による委任の範囲を逸脱し、公権力の行使として違憲・違法となるか。
規範
法律が都道府県に対して「必要な制限」を条例で定めるよう委任している場合、その委任の範囲は、対象となる営業の場所、営業時間、構造設備といった形式的事項に限定されない。善良の風俗を害する行為を防止するという法律の目的に照らし、当該営業に関し必要な制限を広く定め得ると解すべきである。
重要事実
被告人等は、長野県風俗営業取締法施行条例18条1号が定める「遊技場の営業者等が賭博に類似する行為をさせ、または著しく射倖心をそそる行為をさせてはならない」との規定に違反したとして起訴された。被告人側は、同規定が母法である風俗営業取締法3条の委任の範囲を逸脱しており、憲法等に違反する無効なものであると主張して上告した。
事件番号: 昭和55(あ)862 / 裁判年月日: 昭和55年12月10日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】条例が禁止する「卑わいな行為」という規定は、当該事件の具体的行為に適用される限りにおいて、憲法31条が要求する刑罰法規の明確性の原則に違反しない。 第1 事案の概要:被告人らが長崎県条例(風俗営業等取締法施行条例)24条が禁止する「卑わいな行為」に該当する行為を行ったとして起訴された事案である。被…
あてはめ
風俗営業取締法3条は、都道府県がいわゆる風俗営業の場所、営業時間及び構造設備のみならず、広くこの種営業に関し、善良の風俗を害する行為を防止するために必要な制限を条例で定め得ることを規定したものと解するのが相当である。本件条例18条1号が、遊技場において賭博に類似する行為や射倖心をそそる行為を禁止していることは、善良の風俗を維持し風俗を害する行為を防止するという目的に資する。したがって、この制限は同法3条所定の「必要な制限」の範囲内に含まれるものであり、委任の範囲を逸脱したものとはいえない。
結論
本件条例の規定は法律の委任の範囲内であり、有効である。したがって、被告人等の上告は棄却される。
実務上の射程
法律の委任に基づく条例の有効性を判断する際のリーディングケースの一つ。委任規定を狭義に限定せず、法律の目的に照らして必要な制限であれば、営業の内容に関する規制であっても広く認められるという判断枠組みを示している。行政法における条例制定権の限界(法律の範囲内)や、委任の解釈が問題となる事案で活用できる。
事件番号: 昭和35(あ)2303 / 裁判年月日: 昭和37年4月4日 / 結論: 棄却
風俗営業等取締法第三条に基づく東京都風俗営業等取締法施行条例第二二条は、憲法第一三条、第二二条第一項、第二五条に違反しない。
事件番号: 昭和54(あ)1289 / 裁判年月日: 昭和55年12月9日 / 結論: 棄却
昭和三九年長崎県条例第六一号風俗営業等取締法施行条例二四条四号が明確性を欠き憲法三一条に違反するとの主張は、被告会社の従業員がした本件所為が右規定にいう「卑わいな行為」にあたることは明らかであり、右規定は本件に適用される限りにおいては明確性を欠くとはいえないから、前提を欠く。
事件番号: 昭和50(あ)24 / 裁判年月日: 昭和53年6月16日 / 結論: 破棄自判
個室付浴場業(いわゆるトルコぶろ営業)の規制を主たる動機、目的とする知事の本件児童遊園設置認可処分(判文参照)は、行政権の濫用に相当する違法性があり、個室付浴場業を規制しうる効力を有しない。
事件番号: 昭和44(あ)57 / 裁判年月日: 昭和44年10月17日 / 結論: 棄却
風俗営業等取締法八条は、憲法三一条、三七条に違反しない。