差押令状または捜索令状における押収または捜索すべき場所の表示は合理的に解釈してその場所を特定しうる程度に記載することを必要とするとともに、その程度の記載があれば足ると解すべきである。
差押令状または捜索令状における押収または捜索すべき場所を表示する程度
刑訴法102条2項,刑訴法107条,刑訴法218条1項,刑訴法219条
判旨
捜索差押令状における場所の記載は、合理的に解釈してその場所を特定し得る程度に記載されていれば足り、世帯主の記載に相違があっても場所の特定に支障がなければ令状は有効である。
問題の所在(論点)
令状に記載された世帯主名が現に居住する世帯主と異なる場合や、記載された人物が既に転居している場合において、刑事訴訟法219条1項(場所の特定)の要件を満たすか。
規範
刑事訴訟法上の捜索差押令状における場所の表示は、合理的に解釈してその場所を特定し得る程度に記載することを必要とするが、その程度の記載があれば足りるものと解するのが相当である。
重要事実
捜索差押許可状には、捜索場所が「京都市…通称AことB方家屋内並附属建物全般」と記載されていた。しかし、実際にはBは被告人の母の内縁の夫であり、B夫婦は2階に、被告人夫婦は1階に居住する同居関係にあった。また、被告人が当該家屋の世帯主であり、B夫婦は捜索の約1ヶ月前に既に転居していた。弁護人は、場所の特定が不十分であり令状が違法であると主張した。
事件番号: 昭和26(あ)2185 / 裁判年月日: 昭和28年3月13日 / 結論: 棄却
一通の許可状でもつて臨検、捜索および差押について各個の許可がなされた場合、差押の許可に関する瑕疵は臨検、捜索の許可の効力に何らの影響もおよぼさない。
あてはめ
本件令状に記載された「AことB」という名称は、当時の居住状況や親族関係に照らせば、当該住所地にある特定の建物を指し示すものとして合理的に解釈可能である。被告人が真の世帯主であったり、B夫婦が転居済みであったりしたとしても、記載された住所・通称等の情報によって捜索すべき場所は客観的に特定されているといえる。したがって、令状の記載内容から執行対象となる場所を誤認するおそれはなく、場所の特定を欠くものとは解されない。
結論
本件令状記載の捜索すべき場所は特定されており、令状は有効である。したがって、これに基づき実施された捜索差押に違法はない。
実務上の射程
令状の場所特定に関する基本的な判断枠組みを示す。多少の名称誤記や居住実態の変化があっても、社会通念上、住所地等の他の記載と併せて場所が特定可能であれば適法とされる。答案では、令状の「特定」の程度について、過度に厳格な一致を求めるのではなく、執行の適正が担保される程度の合理的特定があれば足りる旨を論述する際に引用する。
事件番号: 昭和55(あ)300 / 裁判年月日: 昭和56年9月18日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】適法な捜索差押手続により差し押さえられた物件が、許可状の記載範囲に含まれ、かつ犯行時に既に捜査員により占有保管されていた場合、その証拠能力は否定されない。 第1 事案の概要:被告人が憲法21条および35条違反を主張して上告した事案。問題となった本件文書は、捜索差押許可状に基づき執行された手続によっ…