選挙運動につき、その報酬と費用との割合が明確にされず、従つて右両者を区別することなく包括して供与された金員は、その全額が没収または追徴の対象となる。
選挙運動につき報酬と費用とが不可分的に一括して交付された場合と没収または追徴
公職選挙法224条
判旨
選挙運動に関し、報酬と実費の区別なく包括的に供与された金員は、その全額が没収または追徴の対象となる。
問題の所在(論点)
公職選挙法違反の事案において、報酬と実費を区別せず「包括的」に供与された金員のうち、どこまでが没収・追徴(刑法19条、公選法221条等関連)の対象となるか。報酬部分のみに限定されるべきかが問題となる。
規範
選挙運動につき、報酬(利益供与)と実費(費用)との割合が明確にされず、両者を区別することなく包括的に供与された金員については、その全額が没収または追徴の対象となる。
重要事実
被告人らは、選挙運動に関して金員を供与したが、その金員の内訳において、純粋な報酬部分と、運動に要する実費部分との境界が明確にされていなかった。原審は、この包括的に供与された金員全額を没収・追徴の対象と判断したため、被告人側が法令違反等を理由に上告した。
あてはめ
本件では、供与された金員について報酬と費用の割合が客観的に区別されていない。このような場合、金員全体が不法な利益供与の性質を帯びるものと解される。したがって、一部に実費が含まれていたとしても、それを切り離して没収対象から除外することはできず、包括的に供与された金額のすべてが没収・追徴の対象となると評価される。
結論
包括的に供与された金員は、その全額が没収または追徴の対象となる。原判決に憲法違反や判例違反の不当はなく、上告を棄却する。
実務上の射程
公職選挙法における買収罪等の没収・追徴の範囲を画定する際、実務上「不可分な一団」として渡された金銭は全額没収の対象とする実務慣行の根拠となる。答案上は、没収・追徴の対象範囲が争点となる場合に、供与の「包括性(不可分性)」を理由に全額を対象とする規範として引用できる。
事件番号: 昭和29(あ)1339 / 裁判年月日: 昭和30年5月10日 / 結論: 棄却
一 共犯者が選挙権及び被選挙権を停止されないのに、被告人はこれを停止されたからといつて、憲法第一四条に違反しない。 二 選挙人又は選挙運動者が投票取りまとめの報酬と、そうでない合法的な金員とを一括して供与を受けた場合にその両者の割合が明らかでないときは、その金員全部について公職選挙法第二二一条第一項四号の供与を受けた罪…