犯人が衣類を窃取して屋外に出た際、帰宅した家人(女)に発見され、逮捕を免れるため、同女を屋内に押し入れ両手を後手に縛り上げて押入れに入れる等の暴行を加えたのち、同女の姿態をみて劣情を催しその押入内で同女を強姦した場合において、強姦前に盗品をもとの場所に返還した事実があつたとしても、刑法第二四一条前段の罪の成立を妨げない。
強姦前に盗品を返還した場合と強盗強姦罪の成立
刑法238条,刑法241条
判旨
強盗犯人が、強取した財物を被害者に返還した後に被害者を強姦した場合であっても、刑法241条(旧法)の強盗強姦罪が成立する。
問題の所在(論点)
強盗犯人が、強取した財物を被害者に返還した後に強姦に及んだ場合において、刑法241条(旧法)の強盗強姦罪が成立するか。財物の占有継続が強盗強姦罪の成立要件となるかが問題となる。
規範
強盗強姦罪(旧刑法241条前段)の成否は、強盗の機会に行われたか否かによって決せられるべきであり、一旦強取した財物を返還したか否かという財物占拠の状態の継続の有無によって左右されるものではない。
重要事実
被告人は、強盗の手段として暴行又は脅迫を用いて被害者から財物を強取した。その後、被告人は強取した当該盗品を被害者に返還したが、その直後に被害者を強姦した。弁護人は、強姦が行われた時点では財物が返還されており強盗状態が解消されているため、強盗強姦罪は成立しないと主張して上告した。
あてはめ
強盗強姦罪は、強盗の機会に強姦が行われることで成立する結合犯である。本件において、たとえ強姦の前に盗品が返還されていたとしても、一連の強盗の現場において、強盗の機会に密接に関連して強姦行為が行われたのであれば、強盗罪と強姦罪の単なる併合罪ではなく、強盗強姦罪としての包括的な評価を受けるべきである。したがって、返還という事実は同罪の成立を妨げるものではない。
結論
盗品返還が強姦の前であったとしても、刑法241条前段(旧法)の罪が成立する。上告棄却。
実務上の射程
強盗強姦罪(現行法241条の強盗・不同意性交等罪も同様)の「機会」の判断において、財物奪取の成否やその後の保持状態は決定的な要素ではなく、強盗行為との時間的・場所的密接性が重要視されることを示す。事後強盗の場合など、強盗の機会を広く捉える際の論拠として活用できる。
事件番号: 昭和30(あ)2444 / 裁判年月日: 昭和30年11月10日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】強盗罪の成立には、行われた暴行・脅迫と金員の奪取との間に相当因果関係があることを要する。本件において、暴行・脅迫と金員奪取との間に因果関係を認めた原判断を維持した。 第1 事案の概要:被告人AおよびBが、被害者に対して暴行・脅迫を加え、その後に金員を奪取した事案である。被告人側は、暴行・脅迫と金員…