量刑不当の控訴趣意において、その理由として訴訟記録にも第一審裁判所において取り調べた証拠にも現われていない同種事案に関する従来の裁判例を援用しても、不適法ではない。
量刑不当の控訴理由として訴訟記録等に現われていない裁判例を援用することの適否
刑訴法381条,刑訴法382条の2,刑訴法393条
判旨
控訴審において、訴訟記録や証拠に現れていない同種事案の裁判例を量刑不当の理由として援用することは、裁判例が量刑の規範的要素であるため許容される。これは控訴審の事後審的性格に反するものではなく、刑訴法382条の2等の制限も受けない。
問題の所在(論点)
量刑不当を理由とする控訴において、第一審の記録や証拠に含まれていない同種事案の裁判例を引用・援用することが、控訴審の事後審的性格や刑訴法上の証拠制限規定に違反しないか。
規範
同種事案に関する裁判例は、被告人や事案に関する個別具体的かつ事実的な量刑事情とは異なり、裁判所が刑を量定し、またはその当否を判断するにあたって考慮すべき「規範的要素」である。したがって、訴訟記録や証拠に現れていない裁判例を量刑判断の資料としても、控訴審の事後審的性格に反しない。また、裁判例の引用については、控訴審における事実取調べや証拠制限に関する規定(刑訴法381条、382条の2、393条)の適用は受けない。
重要事実
被告人4名の弁護人は、検察官が控訴趣意書において、第一審の訴訟記録や証拠に現れていない同種事案の裁判例を量刑不当の根拠として援用したことを不当とし、かかる手法が認められるかどうかが争点となった。弁護側は、これが控訴審の事後審としての構造や、新証拠の提出制限等に抵触する旨を主張して上告した。
あてはめ
量刑の当否を判断する際、裁判所は単に個別の事実を確定するだけでなく、法の適用として妥当な刑の範囲(量刑相場)を検討する必要がある。裁判例は、この適正な量刑の範囲を示す「規範的要素」に該当する。証拠によってその存否を確定すべき「事実」ではないため、第一審での主張や立証の有無にかかわらず、裁判所は当然にこれを参照し得る。したがって、検察官が控訴趣意書で裁判例を記述することは、新証拠の提出等に該当せず、法的に何ら妨げられない。
結論
控訴審が第一審の量刑の当否を判断するにあたり、記録等に現れていない同種裁判例を考慮することは適法である。したがって、これを含む検察官の控訴趣意を不適法とすべき理由はない。
実務上の射程
量刑不当(刑訴法381条)を論じる際の資料の範囲に関する重要判例である。答案上は、控訴審の事後審的性格を確認しつつ、裁判例が「事実」ではなく「規範的要素」であることを論拠に、記録外の資料であっても引用可能であることを示す際に用いる。特に量刑の公平性の観点から、裁判例の参照が不可欠であることを補足すると説得力が増す。
事件番号: 昭和28(あ)3082 / 裁判年月日: 昭和28年11月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑事訴訟規則246条に基づき、判決書において控訴趣意書の記載を引用することは、判決に控訴趣意を直接記載したのと同一の効果を生ずるため、訴訟法上の違法とはならない。 第1 事案の概要:被告人が上告を提起した際、弁護人は「判決書に控訴趣意の記載がないこと」を実質的な理由として、憲法違反および訴訟法違反…