一 昭和二八年法律第一七二号により追加された刑訴第三三九条第一項第一号の規定の施行前においては、起訴状の謄本が公訴の提起があつた日から二箇月以内に被告人に送達されなかつた場合には、公訴の提起は、公訴棄却の裁判をまつまでもなく当然さかのぼつてその効力を失つたものと解すべきである。 二 第一次の公訴の提起がさかのぼつてその効力を失つた以上、同一事件につき第二次の公訴の提起があつても被告人を二重危険に曝すことはあり得ない。
一 刑訴第二七一条第二項(昭和二八年法律第一七二号により追加された刑訴第三三九条第一項第一号の規定の施行前における)の規定による公訴提起の失効と判断の要否 二 第一次の公訴提起失効後の第二次の公訴提起と二重危険
刑訴法271条2項,刑訴法339条1項1号(昭和28年法律172号により改正されたもの),刑訴規則176条2項(昭和28年最高規則21号による改正前),刑訴規則219条の2,憲法39条
判旨
起訴状謄本が一定期間内に送達されず公訴提起が遡及的に効力を失った場合、その後に同一事件についてなされた公訴提起は二重起訴にあたらず、二重の危険の禁止にも反しない。
問題の所在(論点)
起訴状謄本の送達不能により第一次公訴が遡及的に失効した後、同一事件についてなされた第二次公訴の提起は、二重起訴の禁止および二重の危険の禁止に抵触するか。
規範
公訴提起が遡及的に効力を失った場合には、当該公訴提起による訴訟係属は実質的にも形式的にも存在しなくなる。したがって、その後に同一事件について再度の公訴提起がなされても、いわゆる二重起訴(刑事訴訟法338条4号参照)には該当せず、被告人を「二重の危険」に曝すことにもならない。
重要事実
検察官は昭和24年7月、被告人を私文書偽造・行使・詐欺の罪で起訴したが、起訴状謄本が2か月以内に被告人に送達されなかった。裁判所は公訴棄却の裁判を経ずに失効通知を出し、その後、検察官は同一罪名・同一事実で第二次公訴を提起した。弁護人は、これが二重起訴であり、二重の危険の禁止に触れる違憲なものであると主張して上告した。
あてはめ
本件における第一次公訴は、当時の法規に基づき、謄本が期間内に送達されなかったことで当然に遡及的失効を認めるべきである。この失効により、第一次公訴による訴訟係属は消滅しているため、第二次公訴の提起時点で「事件が被告人に対しさらに公訴が提起されたとき」(刑訴法338条4号)という二重起訴の状況は生じない。また、訴訟係属が消滅した以上、被告人が重畳的な訴追による不安定な地位に置かれることもないため、二重の危険の法理にも反しない。
結論
本件第二次公訴の提起は二重起訴にあたらず、適法である。上告棄却。
実務上の射程
公訴棄却の裁判を待たずして公訴の効力が遡及的に消滅する特殊な事例において、二重起訴や二重の危険の禁止が及ばないことを示した。現行法下(刑訴法339条1項1号、規219条の2)では公訴棄却の決定がなされる運用だが、訴訟係属が有効に存続していない場合の再起訴の可否を判断する際の基礎的理論として活用できる。
事件番号: 昭和31(あ)4239 / 裁判年月日: 昭和33年5月1日 / 結論: 棄却
本件の第一審判決説示のごとく詐欺の意思を除く以外の事実は、すべて認められると認定しているような場合には、被告人を公判廷で公訴事実その他につき質問し、原控訴判決が証拠とした被告人の検察官に対する供述調書の措信すべきや否や等につき取調をなせば、その余の証拠につき直接取調をしなくとも、控訴審が被告人の犯罪事実の存在を確定せず…
事件番号: 昭和55(あ)2181 / 裁判年月日: 昭和56年2月27日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】同一の犯罪について二重に処罰するものでない限り、量刑上の不利益が生じても憲法39条の二重処罰禁止の規定には違反しない。 第1 事案の概要:被告人が上告審において、量刑の不当性や憲法14条・39条違反を主張した事案。弁護人は、本件の処罰が二重処罰にあたると主張して上告したが、具体的な事案の詳細は本決…