検察官が一旦不起訴にした犯罪を後日起訴しても、憲法第三九条に違反するものではない。
一旦不起訴にした犯罪を起訴することと憲法第三九条
憲法39条,刑訴法248条
判旨
検察官が一度不起訴処分とした犯罪事実について、後に公訴を提起することは憲法39条の二重処罰の禁止に抵触しない。
問題の所在(論点)
検察官が一旦不起訴にした犯罪事実を、後日になって起訴することが、憲法39条のいわゆる二重処罰の禁止に違反するか。
規範
検察官による不起訴処分には裁判のような既判力は生じない。したがって、不起訴処分がなされた後に同一の犯罪事実について公訴を提起することは、憲法39条が禁ずる「二重処罰」や「一事不再理」の原則には抵触しない。
重要事実
被告人は複数回の詐欺罪に問われ、第一審で自白のほか関係人の証言や供述調書等に基づき有罪判決を受けた。被告人側は、本件のうち一部の事実について検察官が一旦不起訴処分にしていたにもかかわらず、後に起訴したことは憲法39条の二重処罰禁止に違反すると主張して上告した。また、自白が不当に長い拘禁に基づくものであるとも主張した。
あてはめ
憲法39条の二重処罰禁止の原則は、確定した刑事裁判の後に再び罪に問われることを防ぐものである。本件において、検察官が行った不起訴処分は行政官による訴追の裁量的判断に過ぎず、裁判所による確定判決ではない。そのため、不起訴後に新証拠の発見や事情の変化等により公訴を提起しても、同一の罪について重ねて刑事上の責任を問うことにはならず、同条に違反しない。また、拘禁の長さについても事案の複雑性や関係人の多さを考慮すれば不当とはいえない。
結論
検察官が一旦不起訴にした犯罪を後日になって起訴しても、憲法39条に違反するものではない。
実務上の射程
検察官の公訴権行使の自由を認めた判例であり、不起訴処分に既判力がないことを示す。答案上は、再起起訴の適法性が争われる場面で、公訴棄却(刑訴法338条4号)の成否を検討する際の前提として「不起訴処分は憲法上の二重処罰禁止の対象外である」旨を簡潔に述べるのに有用である。
事件番号: 昭和30(あ)2201 / 裁判年月日: 昭和30年10月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑法56条及び57条に基づく再犯加重の規定は、憲法39条の二重処罰禁止の原則に反しない。 第1 事案の概要:上告人は、刑法56条及び57条の規定に基づき再犯として刑を重くされた。これに対し弁護人は、当該規定が「何人も、実行の時に適法であつた行為又は既に無罪とされた行為については、刑事上の責任を問は…
事件番号: 昭和28(あ)5050 / 裁判年月日: 昭和30年11月1日 / 結論: 棄却
一 昭和二八年法律第一七二号により追加された刑訴第三三九条第一項第一号の規定の施行前においては、起訴状の謄本が公訴の提起があつた日から二箇月以内に被告人に送達されなかつた場合には、公訴の提起は、公訴棄却の裁判をまつまでもなく当然さかのぼつてその効力を失つたものと解すべきである。 二 第一次の公訴の提起がさかのぼつてその…
事件番号: 昭和41(あ)2665 / 裁判年月日: 昭和42年5月4日 / 結論: 棄却
控訴審が第一審判決の刑を重く変更した場合に、これに対し更に権利として不服申立をする途がないからといつて何ら憲法の規定に違反しないことは、昭和二五年九月二七日大法廷判決(刑集四巻九号一八〇五頁)および昭和二三年三月一〇日大法廷判決(刑集二巻三号一七五頁)の趣旨に徴し明らかである。