被告人が単一の犯罪意思にもるものではなく、別個の犯罪意思にもとずき、犯罪の期間および場所を異にし別の共犯者とともに同一の犯罪構成要件に該当する数個の行為をしたときは、被害法益が同一であるからといつて一個の犯罪が成立するものとはいえない。
包括一罪と認められない一事例
商標法34条1号,刑法45条前段
判旨
同一の商標権を侵害する行為であっても、別個の犯罪意思に基づき、共犯者や実行場所を異にして行われた場合は、併合罪(刑法45条前段)として数罪が成立する。
問題の所在(論点)
同一の商標権を侵害する複数の行為について、被害法益が同一である場合に一罪(包括一罪等)となるか、それとも別個の犯罪意思や犯行態様の差異を重視して数罪となるか(刑法45条前段)。
規範
同一の権利(商標権)を侵害する行為が連続する場合であっても、それが犯人の単一の犯罪意思に基づくものか、それとも別個の意思決定に基づくものかによって罪数は区別される。特に、意思決定の更新が認められ、かつ共犯関係や実行場所、実行期間といった犯行の態様に差異がある場合には、被害法益の同一性のみを理由に一罪と解することはできず、各別に数罪が成立する。
重要事実
被告人は、同一の商標権を侵害する行為を繰り返した。しかし、これらの犯行は、単一の犯罪意思によって継続的に行われたものではなく、各犯行ごとに別個の意思決定がなされていた。また、犯行の行われた期間や場所がそれぞれ異なっているだけでなく、共に犯行に及んだ共犯者も各事件ごとに別人であった。
あてはめ
本件において、被告人は所論のような単一の意思に基づくものではなく、判示の通り、各犯行ごとに別個の犯罪意思を形成している。また、犯行期間および場所が異なっている事実に加え、共犯者を異にしている点からも、各犯行の独立性が高い。被害法益が商標権という同一の対象であっても、これら主観的・客観的な諸要素(意思決定の更新、場所・共犯者の相違)を総合すれば、各犯行は個別に観察されるべきである。
結論
被告人の行為は、別個の犯罪意思に基づき態様を異にして行われたものであるため、数罪の成立を認めた原判決は正当であり、併合罪となる。
実務上の射程
数罪の成否(罪数論)において、保護法益の同一性だけでなく、主観的態様(意思の連続性)や客観的態様(場所・時間・共犯者の共通性)を総合考慮して決定すべきとする実務上の基本的な判断枠組みを示している。特に共犯者が異なる場合は、意思決定の独立性が認められやすく、併合罪の方向に働きやすい。
事件番号: 昭和29(あ)2229 / 裁判年月日: 昭和31年7月3日 / 結論: 棄却
「Coca Cola」なる文字で示した商標と「Cola Cola」なる文字の部分を要部とし、これと図形、記号との結合、着色による商標とは、称呼上および外観上類似し、両商標は商標法第三四条にいう「類似ノ商標」というべきである。