一 商標が「コニヤツク」を指定商品として登録されている場合に、これを和製の「ブランデー」に使用する行為は、指定商品に類似する商品についての登録商標の使用として商標法第三七条第一号により商標権の侵害とみなされるものではなく、指定商品に登録商標を使用したものとして同法第七八条の商標権を侵害する行為にあたる 二 商標法第七八条の商標権を侵害する犯行は、それが継続して行なわれたときは、登録商標一個ごとに包括一罪となり、また、その行為が、別個の登録商標を表示するラベルが二個貼付されている空瓶にその内容を詰めかえる方法により行なわれたときは、観念的競合の関係に立つと解すべきである
一 指定商品を「コニヤツク」として登録されている商標を和製の「ブランデー」に使用する行為の擬律 二 商標法第七八条違反罪の罪数
商標法4条1項11号,商標法6条,商標法27条2項,商標法37条1号,商標法78条,商標法2条3項,商標法78条,刑法54条1項前段
判旨
登録商標を表示したラベル貼付の空瓶に、指定商品と同一の他商品を詰め替える行為は商標権侵害罪(商標法78条)を構成し、継続的な侵害行為は登録商標ごとに包括一罪、1個の行為に2個の登録商標がある場合は観念的競合となる。
問題の所在(論点)
1. ラベル付き空瓶への商品の詰め替え行為が、商標法上の「指定商品への商標の使用」として商標権侵害罪(78条)を構成するか、あるいは類似商品への使用として「みなし侵害」(37条1号)を構成するか。 2. 継続的な商標権侵害行為および一個の瓶に複数の商標が存在する場合の罪数関係はどうなるか。
規範
1. 登録商標を表示したラベルが貼付された空瓶に、当該商標の指定商品と同一の商品を詰め替える行為は、指定商品に登録商標を使用するものとして商標権侵害(商標法78条)に当たる。 2. 商標法違反の犯行が継続して行われた場合には、各登録商標一個につき包括的に一個の犯罪が成立する。 3. 詰め替えた一個の商品に二個の登録商標が貼付されている場合には、刑法54条1項前段により観念的競合の関係になる。
重要事実
被告人らは、各商標権者が指定商品(ブランデー等)として登録している商標を表示したラベルが貼付されている空瓶を入手し、そこに和製洋酒を詰め替えた上で販売した。一審及び原審はこれを商標法37条1号(みなし侵害)の適用事案として判断したが、被告人が詰め替えた商品は実質的に各商標権者が指定商品として登録した商品と同一のものであった。
あてはめ
1. 被告人らが詰め替えた和製洋酒は、商標権者が指定商品として登録した「ブランデー」等と実質的に同一である。したがって、ラベル付きの瓶への詰め替えは指定商品そのものへの商標使用であり、みなし侵害ではなく商標法78条の直接侵害に当たる。 2. 本件の侵害行為は継続的に行われているため、登録商標ごとに包括して一個の犯罪となる。 3. 一部の瓶には二個の登録商標が貼付されていたが、これは一個の詰め替え行為により二個の商標権を侵害したものであるから、観念的競合となる。
結論
被告人の行為は商標法78条の侵害罪を構成する。罪数については、各登録商標ごとに包括一罪となり、一瓶に複数商標がある場合は観念的競合となる(本件では合計10個の犯罪が成立する)。
実務上の射程
商標法における「使用」の概念と罪数論を示す。特に、真正品の容器を再利用して中身を詰め替える行為が直接侵害(78条)になることを明確にした点、および管理単位を「商標」ごとに捉えつつ、同一態様の継続行為を包括一罪、一個の対象への複数商標付着を観念的競合とした罪数処理の先例として重要である。
事件番号: 昭和27(あ)2939 / 裁判年月日: 昭和28年10月30日 / 結論: 棄却
他人の登録商標と同一の商標を自己の製造する類似の商品に使用したものである以上、その類似商品が商標権者の指定した商品の類別内に属するかどうかにかかわらず、商標法第三四条第一号の罪が成立する。