他人の登録商標と同一の商標を自己の製造する類似の商品に使用したものである以上、その類似商品が商標権者の指定した商品の類別内に属するかどうかにかかわらず、商標法第三四条第一号の罪が成立する。
商標法第三四条第一号の罪と商品の類別
商標法5条,商標法34条1号
判旨
商標法に基づく商品の類別は概要を示したものに過ぎず、商標権の効力は、当該類別に属するか否かを問わず、登録商標と同一又は類似の商品に及ぶ。
問題の所在(論点)
商標権の効力が及ぶ範囲(商標専用権の範囲)を決定するにあたり、商標法上の「商品の類別」は絶対的な基準となるか。類別が異なる場合であっても、類似商品であれば商標権侵害が成立するか。
規範
商標法(旧法)の規定による商品の類別は、便宜上商品の概要類別を示したに過ぎない。したがって、商標権者は常に必ずしもその指示した類別内の商品についてのみ商標専用権を有するものではなく、他の類別に属すべきものであっても、それが登録商品と類似の商品である以上、当該商品についても商標専用権の効力が及ぶと解すべきである。
重要事実
被告人らは共謀の上、E製薬工業株式会社が商標権を有する指定商品と同一または類似の商品である「D」を製造した。弁護人は、当該「D」の用途や商標法上の類別が、商標権者の指定した類別と異なることを理由に、商標権侵害は成立しないと主張して上告した。
事件番号: 昭和27(あ)3897 / 裁判年月日: 昭和28年9月3日 / 結論: 破棄自判
他人の登録商標と同一の商標を、類似の商品に貼付して、販売する目的で所持していたからといつて、商標法第三四条第二号違反をもつて論ずることはできない。
あてはめ
商標法上の類別は、取引の便宜等のための形式的な分類に過ぎない。本件において被告人らが製造した「D」が、E製薬工業株式会社の登録商標に係る商品と類似するものであるならば、その用途や本来属すべき行政上の類別が何であるかを問うまでもなく、同社の商標権を侵害するものと認められる。したがって、類別の相違を理由に侵害を否定することはできない。
結論
被告人らの行為は他人の商標権を侵害するものであり、商標法34条1号(旧法)の刑責を免れない。上告棄却。
実務上の射程
本判決は、商品の類別(現在の区分)が商標権の保護範囲を画定する際の絶対的な境界ではないことを示した。司法試験においては、商標法6条3項(類別が類似の範囲を定めるものではない旨の規定)の解釈を裏付ける判例として、侵害認定における実質的な商品類似性の重要性を論じる際に活用できる。
事件番号: 昭和32(あ)2524 / 裁判年月日: 昭和35年7月6日 / 結論: 棄却
軽自動二輪車は自転車と旧商標法第三四条第一号にいう「類似ノ商品」にあたる。
事件番号: 昭和28(あ)664 / 裁判年月日: 昭和29年8月31日 / 結論: 棄却
一 商標法第三四条第一号、第三号の規定は憲法第二五条に違反しない。 二 商標法第三四条第一号、第三号の規定は職業選択の自由を保障した憲法第二二条と何等関係はない。