他人の登録商標と同一の商標を、類似の商品に貼付して、販売する目的で所持していたからといつて、商標法第三四条第二号違反をもつて論ずることはできない。
他人の登録商標を類似商品に貼付して販売する目的で所持した場合と商標法第三四条第二号違反罪の成立
商標法34条1号,商標法34条2号,刑訴法411条1号
判旨
商標法(旧法)34条2号は、他人に交付・販売する目的で商標等を所持する行為を処罰するものであり、自ら商品に使用して販売する目的での所持は同条の罪を構成しない。
問題の所在(論点)
自ら商品に使用して販売する目的で商標(レッテル)を所持する行為が、商標法34条2号(旧法)にいう「他人に交付若しくは販売する目的」の所持として処罰の対象となるか。
規範
商標法34条2号(旧法)の処罰範囲は、①他人の登録商標等を取り扱い、他人をしてこれを使用させる目的で他人に交付・販売する行為、または②そのような目的で交付・販売するために自己で所持する行為に限定される。自ら商品に貼付して販売する目的で商標等を所持する行為は、本罪には該当せず、使用罪(同条1号)の未遂又は予備にすぎない。
重要事実
被告人らは、他人の登録商標である「E」の文字が記載されたレッテル約3700枚を買い求め、これを自ら密造した注射液に貼付して販売する目的で所持していた。原審は、この行為を「類似の商品である注射液に貼布して販売する目的を以て所持した」ものとして、商標法34条2号を適用し有罪とした。
あてはめ
本件における被告人の目的は、商標を貼付した注射液(商品)自体を販売することにあり、商標そのものを「他人をして使用せしめる目的」で交付・販売することではない。したがって、単なるレッテルの所持は、商標法34条2号が規定する「他人に交付・販売する目的での所持」には当たらない。かかる行為は、同条1号の使用罪の予備的行為に該当しうるが、商標法には未遂や予備を処罰する規定が存在しない。
結論
被告人の行為は商標法34条2号の罪を構成せず、罪とならない行為を処断した原判決には法令適用の誤りがある。当該商標法違反の点については無罪である。
実務上の射程
現行商標法37条(侵害とみなす行為)の解釈においても、各号が定める予備的行為の限定的な文言を厳格に解釈すべきとする際の指針となる。自ら使用する目的と流通させる目的の区別を明確にする必要がある。
事件番号: 昭和28(あ)664 / 裁判年月日: 昭和29年8月31日 / 結論: 棄却
一 商標法第三四条第一号、第三号の規定は憲法第二五条に違反しない。 二 商標法第三四条第一号、第三号の規定は職業選択の自由を保障した憲法第二二条と何等関係はない。