一 外国で入手した砂糖三万斤をわが領海内まで運航した来た上、他の船に積替え、二日宛の間隔をおいて三回に各別の三ケ所に一万斤づつ陸揚げした場合には、右陸揚毎に各別の密輸入罪が成立する。 二 貿易等臨時措置令施行当時命令の定める場合ではないのに政府以外の者が税関の免許なくして貨物(免税品)を輸入したときは、貿易等臨時措置令第一条違反の罪と関税法第七六条の罪との想像的競合となる。 三 昭和二四年一〇月頃税関の免許を受けずに砂糖(当時免税品)を密輸入したときは旧関税法第七六条の罪が成立し、同法第七五条の罪は成立しない。
一 わが領海まで運航して来た貨物を日時を異にし三回に三ケ所に陸揚した場合の罪数 二 貿易等臨時措置令施行当時なされた密輸入行為に対する凝律 三 昭和二四年一〇月頃砂糖を密輸入した場合の擬律
刑法45条,刑法54条1項,関税法(昭和23年法律107号により改正のもの)76条,貿易等臨時措置令1条,貿易等臨時措置令4条
判旨
輸入(密輸入)の実行着手及び既遂時期は、海上においては外国貨物をわが国内に陸揚げした時点であり、陸揚げが複数回にわたる場合は各回ごとに各別の罪が成立する。
問題の所在(論点)
海上からの密輸入における「輸入」の意義及び既遂時期、ならびに複数回にわたる陸揚げ行為の罪数関係が問題となる。
規範
「輸入」とは、海上にあっては、正規の通関手続を経ないで船舶から外国貨物をわが国内の陸地に陸揚げして、わが国内の貨物とすることをいう。したがって、陸揚げが別個の機会に行われた場合には、その陸揚げごとに各別の密輸入の罪が成立する。
重要事実
被告人らは、島で入手した砂糖3万斤を湾内まで運航し、これを他の船に積み替えた。その後、3回に分けて異なる日(昭和24年10月11日、13日、15日)および異なる場所(名古屋市内2箇所、四日市市内1箇所)において、それぞれ1万斤ずつ陸揚げした。この行為について、数個の密輸入罪が成立するかが争われた。
事件番号: 昭和25(れ)1208 / 裁判年月日: 昭和25年11月10日 / 結論: 棄却
一 本件においてA丸が舞鶴港から福井縣三国港に向け出航する予定であつたことは所論のとおりであるが被告人等は右三国港から朝鮮向けの密航船があること及び同船に連絡する船が舞鶴港から出航することを聞知し此の機会を利して朝鮮えの物品の密輸出を企て判示物件をA丸に積込んだものであり原判決挙示の証拠によればその頃密航船が航行してい…
あてはめ
密輸入の既遂時期は「陸揚げ」時である。本件において、被告人らは当初3万斤を一括して運搬してきたものの、その後3回にわけて別個の場所へ陸揚げしている。陸揚げ行為はわが国内の貨物とする決定的な区分点であり、本件のように時間・場所を異にして行われた各1万斤の陸揚げは、それぞれが独立して「輸入」の概念に該当する。したがって、各陸揚げにつき個別に罪が成立すると解するのが相当である。
結論
陸揚げごとに各別の密輸入の罪が成立し、併合罪となる。原判決に判例違反や法令解釈の誤りはない。
実務上の射程
密輸入罪の既遂時期が「陸揚げ」であることを明確にした。また、一連の運搬過程であっても、陸揚げという既遂に至る行為が複数回に分割され、時間的・場所的隔たりがある場合には、包括一罪ではなく別罪(併合罪)として処理すべき指針となる。
事件番号: 昭和25(れ)945 / 裁判年月日: 昭和25年9月28日 / 結論: 棄却
所論鑑定人Aの鑑定の趣旨が、原判決摘示の通り、判示B丸を以てすれば冬期においても周到なる注意に依つて天候を見定めて出航すればa港より朝鮮への渡航は可能であるとするにあること、その鑑定書の記載自体によつて明瞭である。犯人が客観的に犯罪の遂行に可能な手段を以てその實行に着手すれば、犯行實現の危険性あること勿論であるから、偶…
事件番号: 昭和33(あ)258 / 裁判年月日: 昭和33年10月6日 / 結論: 棄却
関税法第一一一条第一項にいう「貨物を輸入」する行為は、海上にあつては、正当な通関手続を経ないで外国貨物を本邦へ陸揚げすることにより既遂となる。
事件番号: 昭和27(あ)6454 / 裁判年月日: 昭和29年5月11日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】実行の着手は、犯行を企図した意思が外部に現れた行為といえるか否かによって判断され、密輸出の予備行為を超え、客観的に密輸出に至る危険性が認められる行為があった場合に認められる。 第1 事案の概要:被告人A及びBは、貨物を朝鮮へ密輸出することを企図し、互いに共謀した。被告人らは、密輸出の実現に向けて具…
事件番号: 昭和25(あ)2864 / 裁判年月日: 昭和27年8月29日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】関税法違反と貿易等臨時措置令違反、およびそれらの幇助行為が、いずれも一個の行為で数個の罪名に触れる場合には、刑法54条1項前段により観念的競合として処理すべきである。 第1 事案の概要:被告人は、昭和24年6月、正規の引揚船ではない発動機船に乗船して鹿児島県から佐賀県へ上陸し、不法に入国した。その…