一 本件のような米弗表示軍票は、本件当時占領軍の軍人、軍属及びその家族が、占領軍施設内においてこれを使用することができるほか、わが国の通信官署の職員が、電信電話の料金として受領することができる等制限的ではあるが、日本国内に流通するものであるから、刑法一四九条一項の「内国ニ流通スル外国ノ紙幣」に当るものと解するを相当とする。されば、所論引用の当裁判第二小法廷の決定(判例集七巻五号一一二八頁以下)を変更すべきものとは認められない。 二 物品税証紙の偽造に対し、刑法第一五五条第三項を適用しないで、同法第一六六条第一項を適用した違法があつても、右の違法は原判決を破棄しなければ著しく正義に反するものとは認められない。
一 米弗表示軍票は刑法第一四九条第一項の「内国ニ流通スル外国ノ貨幣」に該当するか 二 刑訴第四一一条一号にあたらない事例 ―物品税証紙の偽造に対する適用法令の誤り―
刑法149条,刑法155条3項,刑法166条1項,刑訴法411条1号
判旨
米ドル表示の軍用手票は、国内で特定の者が施設内で使用し、官署が料金として受領できるなど流通に制限があっても、刑法149条1項にいう「内国ニ流通スル外国ノ紙幣」に該当する。また、物品税証紙は刑法166条の公印・証票ではなく、刑法155条3項の公文書と解すべきである。
問題の所在(論点)
1. 占領軍施設内や特定の公金受領に限定して使用される米ドル表示軍票が、刑法149条1項の「内国ニ流通スル外国ノ紙幣」に該当するか。 2. 物品税証紙の偽造について、刑法166条1項(公印等偽造)と刑法155条3項(公文書偽造)のいずれを適用すべきか。
規範
刑法149条1項の「内国ニ流通スル外国ノ紙幣」とは、日本国内において事実上支払手段として通用しているものを指し、その流通範囲や主体に一定の制限があっても、国内で流通している実態があればこれに該当する。また、物品税証紙については、物品税法に基づき税金の納付事実を証明する内容を有する政府発行の文書であり、刑法155条3項の公文書に該当する。
事件番号: 昭和27(あ)1079 / 裁判年月日: 昭和28年9月29日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】米軍軍票は、刑法149条1項にいう「内国ニ流通スル外国ノ紙幣」に該当する。これにより、米軍軍票の偽造等は外国紙幣偽造罪として処罰の対象となる。 第1 事案の概要:被告人らは、米軍軍票を偽造し、あるいはそれを使用したとして外国紙幣等偽造・同行使罪(刑法149条)に問われた。弁護側は、米軍軍票は日本国…
重要事実
被告人らは、共謀して米ドル表示の軍用手票(軍票)および日本政府発行の物品税証紙を偽造した。当該軍票は、本件当時、占領軍の軍人・軍属・家族が占領軍施設内で使用できるほか、わが国の通信官署職員が電信電話料金として受領することが認められていた。第一審は、軍票の偽造について外国紙幣等偽造罪(刑法149条1項)を、物品税証紙の偽造について公印等偽造罪(刑法166条1項)を適用し、原審もこれを維持したため、被告人らが上告した。
あてはめ
1. 軍票について:本件軍票は、占領軍関係者が施設内で使用できるのみならず、日本の通信官署が電信電話料金として受領できるなど、制限的ではあるものの日本国内において現に流通している実態がある。したがって「内国ニ流通スル」ものといえる。 2. 物品税証紙について:物品税証紙は物品税納付という法律上重要な事実を証明する政府発行の文書である。したがって、証票(166条)ではなく文書(155条3項)と解するのが相当である。第一審が166条を適用した点には法令違反があるが、155条3項と法定刑の軽重がなく、量刑に影響しないため破棄理由にはならない。
結論
米ドル表示軍票の偽造は刑法149条1項の外国紙幣等偽造罪を構成する。物品税証紙は刑法155条3項の公文書にあたる。上告棄却。
実務上の射程
外国紙幣等偽造罪における「流通」の意義を広く解し、特定の施設内や特定の公金支払に限定されていても、国内で支払手段として機能していれば足りることを示した。また、政府発行の証紙類の法的性質が公文書(155条)であることを明確にしており、罪数や擬律判断の基準として実務上重要である。
事件番号: 昭和29(あ)2549 / 裁判年月日: 昭和30年4月19日 / 結論: 棄却
弗表示軍票は刑法第一四九条第一項の「内国ニ流通スル外国ノ紙幣」に該当する。
事件番号: 昭和31(あ)1748 / 裁判年月日: 昭和34年6月30日 / 結論: 棄却
通貨偽造罪における行使の目的は、自己が行使する場合に限らず他人をして真正の通貨として流通に置かせる目的でもよい。